洋画をネタにしたマンガは数あれど、邦画だけを題材にしたマンガが今まであっただろうか。

いやない。

普段、映画を見る人なら大抵は洋画は見るけど邦画はつまらないと口にする。世界的に見れば映画を山ほど作っている国でありながらも、国民にはほとんど見られることがない。

映画館で日本の映画見ればテレビで顔を見たことがある俳優か女優の顔を見ることができる。それと固定のファンのいるアイドルの微妙な演技を見せてくれる。しかしながら全国のスクリーンで映画を放映されるためにはこの2つを要素のどちらかを外すことはできない。

1年を振り返って日本ではかなりの数の映画が作られているはずなのに私達は1ヶ月に2本として24本の作品を知っているならばそれは映画通と言っても過言ではない。

下手をすれば実写の映画よりもアニメ映画の方が全国で上映している率が高いのではないだろうか。

世の中で邦画を見る人は限られている。2019年の上映数を見ると邦画が689本、洋画589本と邦画の上映数の邦画の多いのにもかかわらず、私達の頭の中で今年の映画を思い起こしてみると今年の邦画は一体いくつおもいだせるだろうか。

そして漫画の世界もマンガのネタになるのは洋画ばかり、日本の映画ではアニメ作品になる。誰でもしっている洋画を中心とした作品をネタにしている漫画がいくつか存在する。

『木根さんの1人でキネマ』『私と彼女のお泊まり映画』『おやすみシェヘラザード』などがある作中で取り扱われる映画はほとんどが洋画、たまに思い出したかのように邦画の話題が出てくる。

そんな洋画の話が中心にしている漫画たちの中で、異色を放つ邦画のみの話を中心とした映画レビューの漫画として登場したのが『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』。

長い前置きはこの辺にして感想を話そう。


ぱっとしない邦画をネタにしたマンガが登場した。

邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん
邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん 表紙

「邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん」邦画をプレゼンするマンガ。邦画の作品を所属している映画の部活こと「映画について語る若人の部」の部長に対して押し付けるようなプレゼン。

映画の面白いところを厳選してそこからさらに斜めの視点からえぐりこむように邦画の1シーンをプレゼンして読者に襲いかかる。マンガだからこその絵もあるプレゼンに読めば読むほどにそんなおかしな映画の内容や場面があるのかと紹介された映画が気になってくる。

取り上げられる邦画はほんとうにそんなおかしな映画なのかが気になりだして見てみようと思ってくる。取り上げた映画の本当に見てほしい見せ場を上手い具合に織り混ぜた興味が惹かれてしまう見事なプレゼンがされる。

漫画の中で取り上げられるプレゼンは映画の見所を見事に強弱をつけて紹介しているので作者の取り扱い方がとても上手。


映画を見る人と同じ感性で話をするにわか映画ファンの部長に対してネジが2本か3本は外れた視点で邦画を語る邦キチの映子さん。このボケとツッコミによってテンポよく邦画についての掛け合いがされる。

完全に一般人と映画マニアのこじらせた人との対話の図式になっており、二人はプロボクサーと素人の戦いのような状態で読んでいると少し部長に同情してしまう。

あまりに見事な掛け合いにもしかしたら自分が一度見たことがある映画であってもあの映画は実は面白かったかなと誤解をいだく。


所詮は誤解なのだけど


1話目のプレゼンでは実写版の『魔女の宅急便』。みんなの頭の中に思いつくのは宮崎駿が作ったアニメ版、邦キチが語る原作よりの『魔女の宅急便』、好きな場面として挙げられるのが「キキの煽りにイラついたトンボが「魔法魔法言うな!!」と叫びながらキキを張り倒すシーンが特に好きで・・・!」

邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん
邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん P10

原作を読んだことも実写を見たこともなく、宮崎アニメの優しい世界しか知らない人たちの度肝を抜かれる展開、監督はあの呪怨で有名な清水崇監督というなぜこの監督なのかという疑問、そして魔女の宅急便のクライマックスは嵐の中をゴムボートでカバを乗せて運ぶ、ちょっと意味のわからない展開に困惑である。

ラストには豪雨の中でのよくわらないマツコ似の人が唄を熱唱!!

このマンガを見る前に映画を見ていたら微妙な映画と判断してしまうような意味のわからない展開の数々、そんな展開を面白く語っている。

マンガを読んだあとに実写版の魔女の宅急便を見ても間違いなくマンガほど面白さはないと思わせるだけの力のあるプレゼンに作者の映画の目線、どんな映画をも面白がる視点で見ていないと描かけない。邦画のプレゼンの1つ1つのインパクトが絶大だ。

「邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん」での邦画プレゼンを読めばどんな邦画も面白いのかもと思えてくる。邦画を見てみるかと考えてしまうのは映画を面白がるセンスの素晴らしさだ。


Webで読めるので一度読んでみてそれから映画を見てみるとどれだけ作者のフィルターが素晴らしいかをかんじることができる。

こちらから読めます。スピネル「邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん」