「異世界転生して最強」という設定は、今のライトノベルでは王道中の王道です。
しかし、その力を得た理由が「偶然、空から落ちてきて竜に激突したから(人間魚雷)」だとしたら?

今回紹介する『竜殺しの過ごす日々』は、そんなギャグのような始まり方でありながら、中身は驚くほど丁寧に作り込まれた異世界ファンタジーです。
全11巻ですでに完結しており、まとめて一気読みするのにもおすすめの作品です。

本作の読みどころ

  • 偶然に偶然が重なって最強になった主人公の「戸惑い」と「順応」
  • 「俺TUEEE」をひけらかさない、地に足のついた生活描写
  • ご都合主義だけで終わらせない、独自の世界観設定(神・魔法)

竜殺しの過ごす日々

  • 著者:赤雪トナ
  • イラスト:碧風羽
  • 出版社:主婦の友社(ヒーロー文庫)
  • 巻数:全11巻(完結)合本版も存在します

あらすじ:偶発的人間魚雷、異世界へ

次元の狭間に落ちて異世界へ行くことになった主人公・幸助。
彼が落ちた先には、たまたま異世界を脅かす「黒竜」がいました。

偶然に偶然が重なり、幸助の体は黒竜に直撃。
その一撃がまさかのクリティカルヒットとなり、神にも匹敵する黒竜は死んでしまいます。
その結果、幸助は黒竜の力を吸収し、異世界でもトップクラスの強さを持つ存在「竜殺し」となってしまいました。

右も左もわからない中、黒竜の生贄になるはずだった少女・ホルンと、その保護者である魔女・エリスのもとへ。
世界で3番目の竜殺しとして、彼の異世界生活が始まります。

感想:力をひけらかさない「日常」の面白さ

最強の力は「添え物」

本作は「小説家になろう」発の作品ですが、いわゆる「無敵になって調子に乗る」展開とは一線を画しています。

1巻を読み返してみても、最強の力をド派手に使うシーンはラストの「依頼」までほとんどありません。
冒険者になっても、最初は薬草採取や街の中の雑用(何でも屋)でお金を稼ぐことに精を出します。
「俺強い!」というカタルシスよりも、異世界での生活基盤を整えたり、人間関係を築いたりするプロセスに重きが置かれているのが特徴です。

「神」と「魔法」の独自設定

この作品がただの「ふわっとした異世界もの」で終わらない理由は、世界観の設定にあります。
特に面白いのが「神」の扱いです。

  • 神は実在する:この世界には確実に神が存在します。
  • 宗教が力を持たない:神が実在し、自分の気に入った存在にしか興味を示さないため、現実のような「組織化された宗教」が権力を持ちません。

また、魔法についても「魔力があるから使える」という単純なものではなく、「世界にお願いして、魔力という対価を払って歪みを直してもらう」という独特な理屈で動いています。
こうした設定を、魔女エリスたちが初心者の幸助(と読者)に丁寧に教えてくれる描写があるため、物語に深みが出ています。

各巻の内容と覚書(ネタバレあり)

物語の細かい流れや、読み返す時のための個人的な覚書です。
タップすると詳細が開きます。

▼ 第1巻:落ちて異世界

一章 落ちて異世界

1.偶発的人間魚雷
いきなりにしてクライマックス、異世界に行ってそして空から落ちて竜を倒す、偶然に偶然が重なる。

2.知り合いは魔女
魔女エリスのもとへ、いけにえになっていたホルンとともに訪れる。1巻ではあまり活躍いないけれども、読む限り裏方としてはかなり頑張っている人物。

3.偶発的超人誕生の開設
竜を倒して大幅レベルアップ、異世界といえば生物の生命力吸収。

二章 始まる異世界生活

4.勉強、運動、また勉強、そして実践
幸助が来た異世界の設定というか世界観をそれとなく読者に。

5.称号竜殺しの効果の一端
称号で竜殺しを獲得したことで、その効果としてなんでも間でも簡単に身に着けてしまうという素晴らしいスキル。技能スキルがあるったのならあっという間に最大レベルまで上げてしまうというチート。

三章 街へお出かけ

6.試験な旅立ち
町に行って生活をすることを覚えるために町へ行く途中に魔物と遭遇、日本に生きていた人物としては生物を殺すことへの忌避感と葛藤。

7.初めての仕事
いきなりばれたくない称号竜殺しがスキルの力によってばれるがそれはどうにかこうにかして、初めての冒険者の依頼は薬草を取りにというどの小説でも大体最初やるお使いイベント、大抵は大きな出来事に巻き込まれるのだけど特になし。

8.冒険出ずになんでも屋
そとの仕事をしなくても金が稼げる事実に気づいてしまう幸助、ひたすら街の中の雑事でお金を稼ぐことに。

9.幸助と冒険者たち
雑事しかしない幸助を小銭あさりと見下す冒険者たちといつまでも処理されない仕事を処理してくれるありがたい存在として認識しているギルドという、複数の視点ではあるものの基本的にテンプレ

四章 帰る前の騒動

10.依頼
1巻のラストなので少し物語を盛り上げてはいる出来事ではあるもの。

▼ 第2巻:ホルンのお見合い

五章 ホルンのお見合い

11.変装・潜入・わたし綺麗?
ホルンのお見合いの話が浮上してくるなか幸助はホルンの護衛としてメイドに化けて貴族の屋敷に潜入する。幻で姿が変わったように見える魔法で女性に変身する。この辺が魔法の便利設定、ところで実際に姿を変えてしまう魔法もあるという話が出てきたけど、以降ででてくるか?

12.家政婦は見ていなかった
いい人だけど変な貴族の登場と事件が起きても、幸助は一切関与していないで気づけば事件が解決していたのでサブタイトル通り『家政婦は見ていなかった』、家政婦は見た!のパロディタイトルだけど、今の若者はどれだけわかるのやら。

六章

13.善行めぐって騒動の元
1巻の中に込められたフラグ、1巻のラストで幸助が街を離れる時に見たゆがみが、成長してゆがみがウィアーレに取りついたために街中の人が変な人たちだらけになってしまう。幸助の人間関係のフラグを確実に積み上げていく。ホルンの件やウィアーレのかかわり方を見ていると作者は女性関係の心の変化に対して気にかけているように思える。

七章

14.ダンジョンアタック!
ボルドスに誘われてダンジョンに挑戦することになった幸助、不思議なことに進めば進むほどに罠が難しくなっていくという不思議なダンジョン、ボルドスの怪しい言い訳とギルドの影。実はギルドが準備した訓練用のダンジョンだった。

15.古きヒーロー、異郷に参上
ダンジョンからの帰りに助けた立ち往生していた馬車を助ける。彼らは軽業や演劇をする旅の一座、幸助は彼らに戦隊ショーを新しい演劇としてやってもらおうと教える。幻を見せる魔法で変身したように見せることに、そしてウィアーレにゆがみの残滓が残っていることから幸助が監視として預かることに。

16.人工ではない天然遺跡へ
ギルドお訓練用のダンジョンではなく、今度は本物のダンジョンにほかの冒険者グループとともに行くことになる。今までは優秀な人物との交流しかなく、今回初めて一般的な冒険者との初めての交流があり、彼ら実力と幸助の実力の差が描かれる。

八章

17.行ってみよう隣の大陸
エリスが迎えに来てほかの大陸へと幸助を誘う。エリスとウイアーレとの初めての対面とエリスの称号『一夜千殺』の由来とエリスの幸助に対する感情の変化。

18.のんびり神域ぶらり旅
薬草を求めて神域にはいることに、そこでリンという少年に出会い一緒に行くことになる。

まとめ:安心して読める良作ファンタジー

ヒーロー文庫で全11巻まで続いたことからも分かる通り、一発ネタで終わらない安定した面白さがある作品です。
「最近の異世界ものは、設定が適当で飽きるな……」と感じている方にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊。

まずは1巻だけでも「人間魚雷」の目撃者になってみてください。