洋画をネタにした漫画は数あれど、あえて「邦画」だけを題材にした漫画が今まであったでしょうか。
いや、ありません。

普段、映画を見る人なら「洋画は見るけど邦画はちょっと…」と口にすることが多いものです。
テレビで見たことのある俳優や、アイドルの微妙な演技を見せられる2時間……。
そんな「邦画の闇」すらも愛し、斜め上の視点でプレゼンしてくる、強烈な漫画に出会ってしまいました。

邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん
邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん 表紙

本作の読みどころ

  • 誰もが見なかったことにしている「微妙な邦画」を掘り起こす狂気
  • 映画マニア(常識人)vs 邦キチ(狂人)のボケとツッコミの応酬
  • 読めば読むほど「クソ映画」が見たくなる、魔法のようなプレゼン力

邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん

  • 著者:服部昇大
  • 掲載誌:スピネル
  • ジャンル:コメディ、映画レビュー

「映画について語る若人の部」の戦い

主人公は、洋画を中心とした「まともな映画」を愛する部長。
そこへ現れたのが、邦画(しかもかなりニッチで微妙なやつ)しか見ない新入部員・邦キチこと邦吉映子だ。

この漫画は、映画の部活を舞台に、部長に対して映子さんが邦画を押し付けるようにプレゼンするスタイルで進行する。
しかし、ただの紹介ではない。
映画の面白いところを厳選し、そこからさらに斜めの視点からえぐりこむように1シーンを切り取って、読者に襲いかかってくるのだ。

プロボクサーと素人のような殴り合い

映画を見る人と同じ「まともな感性」で話をする部長に対して、ネジが2、3本は外れた視点で邦画を語る映子さん。
このボケとツッコミによって、テンポよく邦画についての掛け合いが繰り広げられる。

完全に「一般人」と「こじらせたマニア」の対話の図式になっており、二人のやり取りはまるでプロボクサーと素人の異種格闘技戦のようだ。
あまりに圧倒的な映子さんのプレゼンに、読んでいるこちらも少し部長に同情してしまうほどである。

実写版『魔女の宅急便』という衝撃

第1話で取り上げられるのは、なんと実写版の『魔女の宅急便』。
みんなの頭の中に浮かぶのは、当然ながら宮崎駿監督のアニメ版だろう。
しかし、邦キチが語るのは、我々の知らない『魔女宅』の世界だ。

彼女が好きな場面として挙げるのが、「キキの煽りにイラついたトンボが『魔法魔法言うな!!』と叫びながらキキを張り倒すシーン」
……そんなシーン、あったか?

邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん
邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん P10

作者の「面白がる」フィルターが凄まじい

原作も実写も見ず、宮崎アニメの優しい世界しか知らない人たちは度肝を抜かれるだろう。
監督はあの『呪怨』で有名な清水崇監督(なぜ?)。
そしてクライマックスは、嵐の中をゴムボートでカバを乗せて運ぶという、ちょっと意味のわからない展開に困惑すること必至だ。
極めつけは、ラストの豪雨の中でよくわからないマツコ・デラックス似の人が歌を熱唱するというオチ。

普通なら「なんだこの映画は」と切り捨ててしまうような意味不明な展開の数々を、この漫画は「ここが面白い!」と全力でプレゼンしてくる。
マンガを読んだ後に実写版を見ても、間違いなくこのマンガほど面白くはないだろう。
それほどまでに、作者の「映画を面白がる視点」と「プレゼン力」が卓越しているのである。

まとめ:邦画沼への入り口

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』を読めば、どんな微妙な邦画も「実は面白いのかも?」と思えてくるから不思議だ。
本来なら避けられがちな邦画を進んで見てみようかな、と考えさせてしまうのは、作者のセンスの素晴らしさに他ならない。

Webでも読めるので、まずは一度読んでみてほしい。
そして、その後に実際の映画を見てみるといい。
「現実は漫画ほど甘くない(面白くない)」という絶望と共に、どれだけ作者のフィルターが素晴らしかったかを肌で感じることができるはずだ。

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