日本で一番、自身の発言を深く考えている人は誰でしょうか?
議員でしょうか?
いいえ、問題発言や国会でのヤジ、子供には聞かせられないような言葉を平然と言っています。
大臣でしょうか?
言わなくてもいい失言で辞任した人は、数限りなくいます。
総理大臣でしょうか?
歴代の総理の中にも、なぜそんな言い回しをするのか理解に苦しむ発言をする人物は何人もいました。
芸能人、企業家、弁護士、アナウンサー……。
立場ある人たちが、なぜそんなことを言ったのか理解できない問題発言をするケースは山のようにあります。
では、言葉を最も考えて発言している人は誰か。
それは、天皇陛下ではないでしょうか。
「マスコミが遠慮しているだけでは?」と思うかもしれませんが、日本のマスコミは天皇家であろうと平然とバッシングを行います。
しかし、そんな中で天皇陛下(現上皇陛下)の発言が問題になったという話は、聞いたことがありません。
年間1500件以上もの公務に参加され、その度に何らかの「おことば」を残されているにもかかわらず、です。
今回紹介するのは、そんな深く考え抜かれた言葉の数々をまとめた一冊です。

天皇陛下からわたしたちへのおことば
- 作者:高森明勅
- 出版社:双葉社
- ジャンル:ジャーナリズム・皇室
本書の内容と背景
天皇陛下がテレビで取り上げられることは、意外と多くありません。
バッシングを受けるような行動や発言をされないため、ワイドショーなどのネタになりにくいのです。
私たちがそのお声を聞くのは、生前退位のビデオメッセージや、被災地での「おことば」など、特別な時だけかもしれません。
そのため、陛下が普段どのような発言をされているかを知る機会は意外と少ないのです。
本書では、明仁天皇(現上皇陛下)の「おことば」を、結婚前の皇太子時代から2017年までの流れに沿って厳選し、紹介しています。
- 皇太子時代に何を考えていたか
- 天皇に即位されてから、国民とどう向き合おうとしたか
- なぜ「生前退位」という決断に至ったのか
言葉の背景にある意図や解説を読むことで、その真意を深く理解できる構成になっています。
感想:象徴としての「模索」と「覚悟」
本書を読むと、明仁天皇がなぜ生前退位を決断されたのか、その思いが見えてきます。
昭和天皇は、憲法に則り、決められたことを厳格に行うことで天皇としての責務を果たしました。
しかし、明仁天皇はこう述べられています。
「ロボットになることも必要だが、それだけであってはいけない。」
憲法学者が天皇は「ロボット的存在」でなければならないと明言する時代において、憲法を守りつつも、その制約の中で「新しい天皇の在り方」を模索し続けられたのです。
60年貫かれた「国民とともに」
皇太子時代から現在に至るまで、そのお言葉は一貫して「国民の幸せを願い、国民とともに歩む」という考えに貫かれています。
18歳の頃の力強い言葉から、年齢を重ねるにつれて柔らかさを帯びた言葉へ。
表現は変化しても、言葉への配慮と芯の強さは変わりません。
解説では、3歳で両親と離れて暮らした幼少期や、沖縄で火炎瓶を投げられるという衝撃的な出来事にも触れられています。
年間1500件以上の公務をこなしながら、常に発言に気を配り続ける。その「天皇」という存在の大変さと偉大さを改めて感じさせられます。
心に残る「おことば」
18歳の決意
「ともどもに、よい判断とモラル・バックボーンのある人になりたいものです。」
これは、明仁天皇が18歳の皇太子時代に同世代への一言を求められた時の言葉です。
「私とあなたたち(国民)が共に、判断力と道徳を身につけていきましょう」という呼びかけ。
とても18歳とは思えない言葉ですが、陛下は間違いなくその通りの存在になられました。果たして、私たち国民はどうでしょうか。
31歳の信念
「言ったことは必ず実行する。実行しないことをいうのは嫌いです。」
31歳の誕生日に際し、心境を問われた時の言葉です。
「何歳という区切りを言うのは私の趣味には合いません。一日一日を大事だと思います」と前置きした上で、こう断言されました。
真っ直ぐな人柄と、誰もがそうありたいと願う理想の生き方。
理知的で信念のあるその言葉に、背筋が伸びる思いがします。
まとめ:言葉に思いを馳せる
あなたにとって「天皇」がどのような存在であれ、これほど重い立場で、常に発言を考え続けてきた人物の言葉に触れることは、大きな意味があるはずです。
おまけ:学者としての顔
本の中で「皇室の伝統を見ると、武ではなく、常に学問でした」と述べておられます。
実際、昭和天皇もヒドロ虫類の研究で知られていますが、明仁天皇もまた魚類学者として多くの論文を発表されています。
中でもユニークなのが、皇居内のタヌキに関するこちらの論文は検索すると読むこともできます。





