『成田修造が兄の成田悠輔に14歳の時にもらった読書リスト』日経テレ東大学で取りあげられていたけど、YouTubeチャンネル『日経テレ東大学』が残念ながら2023年3月に閉鎖されて、見ることができなくなっているので一応記録にとってあったので転記

 

成田悠輔から成田修造が14歳の時にもらった読書リスト

 

1. 大西巨人『精神の氷点』(みすず書房)

大西巨人による長大な連作小説で、作者の思想と人生観が凝縮された作品。物語の主人公は、終戦直後の日本に復員した青年。彼は戦争で「地獄」を見てきた陰鬱な目を持ち、世界や人間の存在そのものに対する「虚無」と激しい葛藤を繰り広げ、あらゆる意味を否定することだけを証明しようする。その結果、彼の精神は人間的な温度を失い、だんだんと冷え切っていく。最終的に彼が下す決断は「裁き」とも言える凶行であり、その行為が本書のタイトルである「精神の氷点」を象徴してる。

2. 小島信夫『抱擁家族』(講談社文庫)

小島信夫の芥川賞受賞作であり、日本の私小説の系譜に連なる代表作の一つ。離婚した夫婦とその子供たちが、奇妙な共同生活を送る中で織りなす人間模様を描いてる。近代家族のあり方や、個と個の関係性を深く掘り下げた作品で、登場人物たちの心理描写が秀逸です。

3. 田口賢司『ラヴリー』(角川書店)

田口賢司による異色な作品集で、日常に潜む奇妙さや不穏さを、独特のユーモアと乾いた筆致で描いている。読み進めるうちに、世界の違和感や不条理さが浮き彫りになり、読者の心にざらつくような残像を残す。短編の名手として知られる田口賢司の真骨頂が味わえる一冊。

4. 中原昌也『マリー&フィフィーの虐殺ソングブック』(河出文庫)

中原昌也による小説で、彼の作品群の中でも特に暴力性や狂気を孕んだ世界観が特徴的。過激な描写と独特の文体で、人間の深奥に潜む闇や欲望を剥き出しにす。読者を選ぶ作品ですが、その強烈な個性は一度読んだら忘れられないインパクトを与える。

5. 森川嘉一郎『趣都の誕生』(幻冬社)

秋葉原という街をサブカルチャーの「聖地」として捉え、その文化的・経済的発展の背景を詳細に分析した一冊。オタク文化、メイド喫茶、コスプレなど、秋葉原を形成する多様な要素がどのように生まれ、発展してきたのかを多角的に考察する。現代日本のサブカルチャーを理解する上での良書と言える。

6. 福田恒存『人間この劇的なるもの』(中公文庫)

劇作家であり批評家である福田恒存による、人間存在や社会、文化に対する鋭い洞察に満ちた評論集。人間の本質、自由、そして「劇的」という視点から、現代社会の様々な問題を論じている。その明晰な論理と比類なき文章力は、読む者に深い感銘と示唆を与える。

7. 坂口安吾『堕落論』(新潮文庫)

戦後の混乱期に発表され、当時の人々に大きな衝撃を与えた坂口安吾の代表的な評論。「生きよ堕落せよ」という挑発的な言葉で、戦争によって倫理観が崩壊した社会において、いかに人間らしく生きるべきかを問い直す。日本人の精神性を考える上で、今もなお重要な一冊です。

8. 柄谷行人『<戦前>の思考』(講談社学術文庫)

思想家・批評家である柄谷行人による、日本の近代思想を問い直す重要な論考です。特に戦前の思想状況に焦点を当て、近代日本が抱えていた問題点や矛盾を鋭く分析しています。現在の日本の思想状況を理解するためにも、示唆に富んだ一冊です。

9. 浅田彰『<歴史の終わり>を超えて』(中公文庫)

ポストモダン思想を代表する浅田彰による評論集です。冷戦終結後の「歴史の終わり」という言説に対し、それを乗り越えるための新たな思考の可能性を探ります。現代社会の様々な現象を哲学や思想の視点から解き明かす、知的好奇心を刺激する一冊です。

10. 蓮實重彦『スポーツ批評宣言あるいは運動の擁護』(青土社)

文芸批評家・映画批評家として知られる蓮實重彦が、スポーツを対象に独自の批評を展開した意欲作。単なるスポーツ観戦にとどまらず、身体性、美学、社会性といった多角的な視点からスポーツの本質を問い直す。これまでのスポーツ批評の枠組みを揺さぶるような刺激的な読書体験。

11. 吉本隆明・武井昭夫『文学者の戦争責任』(淡路書房)

吉本隆明と武井昭夫による対談集で、戦時中の文学者のあり方、特に戦争協力と責任の問題について深く掘り下げる。文学と政治、個人の選択と社会の圧力といった重いテーマに対し、真摯に向き合った議論が展開されており、文学史における重要な論点が含まれている。

12. 市川白弦『仏教者の戦争責任』(春秋社)

仏教学者である市川白弦が、仏教が戦争にどのように関わり、その責任をいかに問うべきかを考察した一冊。宗教と国家、信仰と社会といった難しい問題を、仏教の視点から厳しく問い直す。宗教者の戦争責任という、これまで十分に議論されてこなかったテーマに光を当てた画期的な書。

13. 対馬斉『人間であるという運命』(作品社)

精神科医である対馬斉が、人間の存在、そしてその「運命」について深く考察したエッセイ集。臨床医としての経験を通して、人間の心の奥底に潜む感情や葛藤、そして生きることの意味を問いかける。時にユーモラスに、時に厳しく、しかし常に人間への温かい眼差しが感じられる一冊。

14. 鎌田慧『狭山事件の真実』(草思社)

ジャーナリストの鎌田慧が、長年にわたり取材を続けてきた「狭山事件」の真相に迫るルポルタージュ。日本の刑事司法が抱える問題点、冤罪の可能性、そして差別といった深刻なテーマを浮き彫りにしています。事件の背景にある社会構造までをも問い直す、重厚なノンフィクション。

15. 田川健三『キリスト教思想への招待』(勁草書房)

聖書学者である田川健三が、キリスト教思想の根幹を聖書テキストの深い解釈を、通して分かりやすく解説した入門書。キリスト教の教義や歴史だけでなく、それが現代社会にどのような意味を持つのかについても考察されている。キリスト教思想を学びたい人にとって、非常に優れたガイドブックとなる。

16. 浅見定雄『なぜカルト宗教は生まれるのか』(日本基督教団出版局)

キリスト教学者である浅見定雄が、現代社会に蔓延するカルト宗教の問題を、その発生メカニズムから心理的側面、社会的な影響まで、多角的に分析した一冊。カルト宗教の危険性を指摘しつつ、なぜ人々がそこに惹かれるのかという問いにも深く踏み込んでいく。カルト問題に関心のある人にとって、冷静かつ学術的な視点を提供する重要な書。

17. 小室直樹『痛快!憲法学』(集英社インターナショナル)

社会学者である小室直樹が、憲法学の基本を、そのユニークな視点と歯切れの良い文章で解説した一冊。難解と思われがちな憲法を、歴史的経緯や国際比較を交えながら、私たちの生活にどう関わるのかを分かりやすく示している。憲法を楽しく学びたい人に特におすすめ。

18. 平井宜雄『法律学基礎論覚書』(有斐閣)

法学者である平井宜雄による、法律学の基礎的な概念や思考法について記された覚書形式の書。法律学を学ぶ上での思考のあり方、概念の捉え方、論理の展開などを、著者の長年の研究と経験に基づき提示する。法律学の深淵に触れることができる、専門家向けの貴重な書籍。

19. 関曠野『民族とは何か』(講談社新書)

社会思想家である関曠野が、「民族」という概念を、歴史的・思想的な背景から多角的に分析した新書。グローバル化が進む現代において、「民族」というものがどのような意味を持つのか、その複雑な本質を解き明す。民族問題に関心のある人にとって、深い洞察を提供する。

20. 遠山啓『無限と連続』(岩波新書)

数学者である遠山啓が、数学における「無限」と「連続」という概念について、その本質と歴史的発展を分かりやすく解説した新書。難解な数学の概念を、身近な例を交えながら丁寧に説明しており、数学に苦手意識を持つ人でも興味を持って読み進めることができます。数学の奥深さに触れることができる入門書としても優れている。

21. 長谷部恭男『憲法と平和を問い直す』(ちくま新書)

憲法学者である長谷部恭男が、日本国憲法の平和主義について、その理念と現実のギャップ、そして今後のあり方を問い直した新書。憲法改正論議が活発化する中で、平和主義の原則を多角的な視点から考察し、読者に深い思索を促します。日本の安全保障問題に関心のある人にとって、必読の書。

22. 藪下史郎『非対称情報の経済学』(光文社新書)

経済学者である藪下史郎が、現代経済学の重要なテーマである「非対称情報」について、分かりやすく解説した新書。市場の失敗、モラルハザード、逆選択など、非対称情報が引き起こす様々な問題とその解決策について、具体的な事例を交えながら解説する。現代社会の経済現象を理解する上で、非常に有用な本。

23. 木下源一郎『心の起源』(中公新書)

心理学者である木下源一郎が、人間の「心」がどのようにして生まれ、発達してきたのかを、進化論的な視点から考察した新書。脳科学、認知科学、発達心理学などの知見を統合し、心の起源に迫る。人間の本質や意識について深く考えたい人にとって、示唆に富む。

24. 中田力『いち・たす・いち』(紀伊国屋書店)

脳生理学者である中田力による、脳と意識、そして現実認識についてユニークな視点から考察した書。タイトルの「いち・たす・いち」が示唆するように、単純な事実がどのようにして複雑な認識へとつながるのかを、脳の働きと構造に触れながら解き明かしています。人間の意識や知覚の不思議さに触れることができる、刺激的な一冊。

25. 苫米地英人『洗脳原論』(春秋社)

認知科学者、計算言語学者である苫米地英人による、洗脳のメカニズムとその解除方法について解説した書。情報操作、マインドコントロールといった現代社会に蔓延する問題に対し、脳の働きと情報処理の観点からアプローチしています。洗脳から身を守り、主体的に生きるためのヒントが詰まっている。

26. 吉川浩満『心脳問題』(朝日出版社)

科学コミュニケーターである吉川浩満が、長年哲学や科学で議論されてきた「心脳問題」について、その歴史的経緯と現代の議論を分かりやすく解説した書です。心と脳の関係、意識のあり方、自由意志の有無など、人間の根源的な問いを多角的に考察している。心脳問題に興味を持つ人にとって、良質な導入となるでしょう。

27. 岸宣仁『『異能』流出』(ダイヤモンド社)

ジャーナリストの岸宣仁が、日本の企業や研究機関から「異能」と呼ばれる優れた人材が海外に流出している現状について、その背景と問題点を深く掘り下げたノンフィクション。日本の経済力低下や研究力の停滞といった社会問題に直結するテーマであり、日本の未来を考える上で重要な示唆を与える。

28. 矢沢栄吉『成りあがり』(角川文庫)

ロックミュージシャンの矢沢永吉による自伝的エッセイ。貧しい生い立ちから、音楽の道を志し、トップスターに「成りあがっていく」までの壮絶な道のりが、彼独特の言葉と熱いメッセージで綴られている。夢を追いかけることの困難さ、そしてそれを実現する強さを教えてくれる、多くの人に勇気を与える。

29. エドワード・サイード『知識人とは何か』(平凡社ライブラリー)

文学理論家、批評家であるエドワード・サイードが、「知識人」の役割と責任について論じた講演録。社会に対し批判的な視点を持ち、権力に抗い、普遍的な価値を追求する知識人像を提示している。現代社会において、知識人がいかにあるべきかを考える上で、重要な示唆を与える。

30. アヴィナッシュ・ディキシット『戦略的思考とは何か』(TBSブリタニカ)

ゲーム理論の第一人者であるアヴィナッシュ・ディキシットが、日常生活からビジネス、政治まで、様々な場面で活用できる「戦略的思考」の本質を解説する。相手の行動を予測し、自分の行動を最適化するための思考法を、具体的な事例を交えながら分かりやすく提示しています。論理的思考力を高めたい人にとって、非常に有用な一冊。

31. ロルフ・デーゲン『フロイト先生のウソ』(文春文庫)

心理学の歴史における「フロイトのウソ」に焦点を当て、フロイトの精神分析理論がどのように形成され、そしてどのような批判を受けてきたのかを考察している。フロイトの功績を認めつつも、その理論の限界や誤謬を客観的に検証しており、心理学の歴史を多角的に理解する上で興味深い書。

32. ドナルド・クヌース『コンピュータ科学者がめったに語らないこと』(SIBアクセス)

「現代のコンピュータ科学の父」と称されるドナルド・クヌースによる、コンピュータ科学の本質、プログラミング、アルゴリズム、そして科学者の哲学について語られたエッセイ集。技術的な内容だけでなく、コンピュータ科学者の思考法や、科学と芸術の融合といった幅広いテーマに触れている。

33. サイモン・シン『フェルマーの最終定理』(新潮社)

数学史上最大の謎の一つとされた「フェルマーの最終定理」が、350年以上の時を経てアンドリュー・ワイルズによって証明されるまでの壮大な物語を描いたノンフィクション。数学者たちの情熱と苦悩、そして証明に至るまでのドラマが、分かりやすい言葉で綴られる。数学の奥深さと、人類の知の営みの素晴らしさを感じさせてくれる、感動的な一冊。

34. アマルティア・セン『貧困の克服』(集英社新書)

ノーベル経済学賞受賞者であるアマルティア・センが、貧困という人類共通の課題に対し、その本質と克服のためのアプローチを多角的に論じた新書。単なる所得の欠如だけでなく、「ケイパビリティ(潜在能力)」の欠如という視点から貧困を捉え、その解決策を提示している。開発経済学や国際協力に関心のある人にとって、必読の一冊。

35. ケネス・アロー『組織の限界』(岩波書店)

ノーベル経済学賞受賞者であるケネス・アローが、組織が直面する限界や非効率性の原因について、経済学的な視点から分析した古典的名著。情報の非対称性、インセンティブの問題、意思決定のプロセスなど、組織論における重要な概念が、深い洞察と共に提示されています。組織のあり方を考える上で、今もなお示唆に富む。

36. ロバート・マートン他『金融の本質』(野村総合研究所)

ノーベル経済学賞受賞者であるロバート・マートンを含む、著名な金融学者たちが、現代の金融の仕組みと本質について論じた論文集。金融工学、リスク管理、市場の効率性など、金融の様々な側面が、学術的な視点から解説されている。金融の専門家だけでなく、金融市場の動きに関心のある人にとっても、深い理解を得られる。