涼川りん先生の描く、とてつもなくケイオス(カオス)な漫画『りとる・けいおす』。
この作品を一言で表すなら、こうなるでしょう。
「作者の画力に騙されるな。この漫画はシュールだ。」
無駄に凄まじい画力で描かれる、可愛かったり、おバカだったり、無表情だったりするキャラクターたち。
その表情の演技力が強すぎて、正直ビックリするくらいシュールなんです。
タイトルの『りとる・けいおす』の「ケイオス(chaos)」は、「カオス」と同じく「無秩序」「混沌」という意味。
実際に読んでみると、まさに混沌そのもの。タイトルに偽りなしの納得の作品です。

りとる・けいおす(全2巻)
- 作者:涼川りん
- 出版社:双葉社(アクションコミックス)
- ジャンル:シュールギャグ
転校生「ゆずちゃん」の受難
主人公の一人、転校生の「ゆずちゃん」。
一見すると普通の子に見えるのですが、なぜか背負っているのはランドセルではなく風呂敷袋。
私服通学OKな小学校だとしても、風呂敷で登校する小学生なんていません。
流し読みするとスルーしそうになりますが、明らかにおかしいです。
そして、小学生の転校生といえば、普通はクラスの人気者になるはず。
しかし、お昼休みまで誰も声をかけないのです。転校初日からハブられるってどんな扱いなんでしょうか。
クラスメートたち、人間に興味なさすぎません?
声をかけてきた「2人」の目がヤバい
そんな中、ようやく声をかけてくれる2人の生徒が現れます。
「お昼・・・、一緒に食べよ?」
言葉は優しいのですが、目が怖い。
作者ーー!!
なんで登場した瞬間からこんな目で描いた!? と思うほど、目がダークに染まっています。
獲物を観察するような目で話しかけてくるし、無駄に影がかかっていてホラーです。
第1話からフルスロットルの狂気
一緒に食べようと返事をした瞬間、彼女たちは叫びます。
「いきなり勝った!! 負けた!!」
実は彼女たち、転校生がどう返事するかを賭けていたのです。
勝ったのは「あきこちゃん」、負けたのは「うきっぺ」。
リンゴの手品と折れる乳歯
負けたうきっぺは罰ゲームとして手品を披露することに。
「種もしかけもないリンゴがあります」と取り出したリンゴを、あきこちゃんが疑って齧ると……なんと乳歯が折れるという展開。
しかし、元凶であるうきっぺは心配するでもなく、齧られたリンゴを見て一言。
「よく見たら種はありました」
「おしまい」
おい、それで終わるのかい!
しかも、よく見るとリンゴを出す瞬間に手をハンカチで隠しているので、もうその時点から手品が終わっているという、非常に分かりづらいネタになっています。
宿題のために臓器を売る小学生
その後、話題は宿題へ。
当然やっていないあきこちゃんは、先生に怒られないために「賄賂」を渡そうと画策しますが、お金がありません。
そこで出した結論が、「臓器を売ろう」。
いやいや、小学生が出す結論としては重すぎます。
さらにうきっぺが「腎臓は1つ減っても大丈夫みたいです」と背中を押す始末。
見かねたゆずちゃんが「代わりに書いてあげるよ」と言うと、あきこちゃんは目がハートマークになり、「最初からねらってたんだぁ!」とゲスな本性を現します。
1話にしてこのバカキャラ感と、こずるい小物感。素晴らしいキャラ紹介です。
作者の画力が生む「笑い」
この作品の魅力は、なんといっても作者・涼川りん先生の「無駄に高い画力」です。
1巻の個人的ベストシーン
第2話でうきっぺが「馬」になるシーン。
うきっぺの「ふくらはぎの筋肉」と「くるぶしより下」をあえて小さく描くことで、「これは馬である」と読者に納得させてしまう画力。
無駄に凄いです。大好きです。
2巻のおすすめエピソード
2巻ではさらにネタのキレが増しています。
個人的なおすすめは以下の2つ。
- 第30話: 3段論法による「ゆえに人は豚である」
- 第34話: 二人の兄弟の日常に潜む異常性
まとめ:『あそびあそばせ』ファンも必読
作品は全2巻で完結しており、面白いネタをやるだけやってサッと終わっているので、中だるみが一切ありません。
どの話も納得できる面白さで、出てくるすべてのキャラが無駄に個性的で忘れられなくなります。
1巻と2巻の表紙を見ると、作者の遊び心なのか迷走なのか悩んでしまう画風の変化が見られますが、これは現在の『あそびあそばせ』にも通じる「インパクト重視」のスタイルかもしれません。
同じシーンでもキャラごとに違うタッチで描かれる表情、思わず「いやいやいや」とツッコミを入れたくなるシュールなギャグ。
『りとる・けいおす』という名前に負けない、名作です。




