ラノベ作家・古橋湊大の住んでいるアパートの隣の部屋に、家庭教師時代の元教え子・音成奏が引っ越してくる。
彼女は、かつて湊大が大ヒットさせた作品のヒロインのモデルだった。
心惹かれた女の子が大人になって隣の部屋に引っ越してくる。
それだけでもドキドキするので距離を置こうとするが、物理的な距離も近く、奏の行動も相まって、気づけば晩御飯を一緒に食べる関係になっていく。
※Kindle Unlimitedの対象作品となっていることがあります(2026年1月時点)。加入中の方はそちらで読んでもよいかもしれません。
理想のおとなりさん
- 著者:佐野妙
- 出版社:ぶんか社
- 巻数:全2巻(完結)
- ジャンル:4コマ・恋愛
この記事の要点
- 恋愛4コマながら、ほぼノーストレスで読める優しい作品
- 「売れない作家」の再起を描くサクセスストーリーでもある
- 大人の男性の幸せには「生活の安定」が不可欠だと感じさせる結末

感想:恋愛4コマながら「ほぼノーストレス」
恋愛を主軸にした4コマ漫画だが、少し変わっているのが「ほぼノーストレス」であること。
普通に恋愛がメインではあるが、2巻で完結するだけあって大きな事件はなく、終始穏やかだ。
両想いでありながらも、二人で遠慮して距離をとろうとしたり、また近づいたりと。
相手の気持ちがわからないために、読者が「いつ切り出すのか」と思うような、じれったい片思いの二人。
たった一歩踏み込むだけで両想いになる関係を、最初から最後まで続けるのは恋愛漫画の王道と言えばそれまでだ。
しかし、全2巻という長さでは、大きな出来事のための伏線を張るのは難しい。
もともと4コマ漫画の連載作品は「その時読んで楽しめる」という雑誌の作り方がされているので、どうしても短い巻数だと、伏線の準備をするよりも気軽に読める構成となっている。
もう一つの軸は「主人公のサクセスストーリー」
恋愛4コマ漫画なので、大筋としては二人の恋愛が成就することがラストとなる。
だが、この漫画にはもう一つのお話がある。
それは、主人公である古橋湊大のサクセスストーリーという面だ。

彼は作家として、教え子の音成奏をモデルに書いたデビュー作『太陽の女神が俺にだけデレてくる』でアニメ化するほどの大ヒットを飛ばした。
しかし、1作目以降は鳴かず飛ばず。
作家としては生きていけず、市の文化講座で文章の書き方を教えながら、新しい作品を書いては持ち込んでいる生活をしている。
今の生活は作家にもなれず、何とか文化講座を教えながら、地に足がついていない状態。
その中で隣に引っ越してきた音成奏は、市の社会福祉士として地に足がついている生き方をしている。
大人の男のハッピーエンドとは
そんな彼女との恋愛を成就するためには、どうしても地に足をついた生活ができるようにならないといけない。
男としてのプライドや釣り合いが取れるようにならないと、うだつの上がらない男がヒモのような状態で付き合っているように見える可能性もある。
二人とも良い歳なので、作品の結末として「物語が終わった以降も幸せで生活している」という印象を読者に与えて終わりたいと思うのは、ゆるい恋愛漫画としてはまっとうな着地点と考えるのは、それほど間違ってはいないだろう。
恋愛漫画で主人公が女性なら「心の救済」でもよいが、男性の場合は少し違う。
心の救済は20代前半まで。
大人としての男性なら、生活の安定や成功をしてこそ、物語が終わった後の未来を読者が想像したときに、幸せをイメージさせることができるのではないか。
まとめ
1巻から2巻前半までは、古橋湊大が作品を書いても企画として通らず、ほかの作品を見ても「なぜこれが売れるのか」ということを口にしている。
彼は、自分が売れる作品をどうしたら書けるのかがわかっていない。
そんな中で、ヒロインのモデルにした音成奏と再会したことで、「自分が書きたい作品はなにか」がわからず切羽詰まってしまう。
元カノに煽られても書けない状態から、「書きたい」と思い、書いて連載が始まる。
そこまでの音成奏との関係のなかでの気持ちの変化によって、作品を作ることができた。
大人としての対等な関係として、二人が幸せになるイメージを読者に想像させる良い終わり方だった。




