テレビで見た田舎の風景に憧れて、勢いでIターン。
しかし、待ち受けていたのは「スローライフ」とは程遠い、過酷で賑やかな現実だった。
今回紹介するのは、おーはしるい先生の『あい・ターン』。
都会育ちの主人公・港明(みなと あきら)が、田舎の洗礼を受けながらも、隣人の山辺さん一家に助けられ、少しずつ馴染んでいく「ゆる〜い田舎暮らしコメディ」だ。
都会と田舎のギャップ、人間関係、そして容赦ない自然。
これらを4コマ漫画として軽妙に描き出し、小さな笑いを積み重ねていく手腕はさすがの一言に尽きる。

作品情報
| タイトル | あい・ターン(1) |
|---|---|
| 著者 | おーはしるい |
| 出版社 | 芳文社 / ぶんか社 |
| ジャンル | 4コマ漫画 / 田舎暮らし / コメディ |
| あらすじ | 田舎暮らしに憧れて「夢里村」に引っ越してきた港明。 しかし、バスは来ない、虫は出る、近所付き合いは濃厚。 隣の家の「山辺さんち」に助けられながら、新米教師としての田舎ライフが始まる。 |
感想:田舎暮らしの「甘くない」リアル
主人公の明は、理想を抱いて田舎へやってくる。
しかし、引っ越し早々に田舎の洗礼を浴びることになる。
バスは18時以降来ない。車がなければ買い物にも行けない。
結局、隣の山辺さん家に車を出してもらい、ご飯までご馳走になる始末だ。
1年間を通して村での生活に慣れてはくるものの、それでも「田舎あるある」に振り回され続ける描写が面白い。
- 家の鍵は閉めないのがデフォルト
- 無駄に山を持っている人がいる
- 気づけば家の中に虫がいる(カメムシなど)
- 噂話は一瞬で村中に広まる
田舎の学校を出た自分としては、「確かにそんなこともあったな」と懐かしく思うエピソードばかりだ。
特に、明と隣人の山辺蕗(ふき)との、近所の人に冷やかされがちな微妙な距離感も、田舎特有の「狭い人間関係」を感じさせて楽しい。
雪道の運転は「死」と隣り合わせ
特にリアルだったのが、冬の描写だ。
モデルはおーはしるい先生の地元である群馬県らしく、かなり寒い地域の設定になっている。
「3cmの雪で電車が止まる東京」とはわけが違う。
明は雪の中を自分の車で帰ろうとするのだが、スタッドレスタイヤでもなければチェーンもなく、ましてや4WDでもない。
そんな装備で雪の積もった山道へ突っ込むのは、完全に死亡フラグだ。
スピン必至の無謀な挑戦。
こういった「都会人の無知」をコミカルに描けるのが、この作品の良さだろう。
作家性:おーはしるい節の安定感
おーはしるい先生の作品といえば、『会計チーフはゆ〜うつ』や『夫婦な生活』などが有名だ。
本作も、当時から変わらない「安定した面白さ」がある。
「気弱な男 × 気の強い女」の方程式
おーはし作品の特徴として、「気弱な男性主人公」と「気の強いヒロイン」という組み合わせが多い。
本作の「明」と「蕗」もまさにその系譜だ。
この性格の掛け合わせが、ストーリーのある4コマ漫画の中で「クスリ」と笑える隙間を生み出している。
爆笑というよりは、じわじわと積み重なる小さな笑い。これこそが4コマ漫画の醍醐味だ。
ちなみに、旧作ファンへのサービスとして、『会計チーフはゆ〜うつ』のキャラである大崎由紀(結婚して白石由紀)が登場する。
これを見つけたときは、思わずニヤリとしてしまった。
まとめ
田舎暮らしを知っている人は「あるある」と共感し、知らない人はそのギャップを楽しめる。
4コマ漫画だからこそのテンポの良さで、最後まで一気に読めてしまう良作だ。
Iターンを考えている人は、夢を見る前にまずこの漫画を読んで、雪道の恐ろしさとご近所付き合いの濃厚さを予習しておくべきかもしれない。





