四コマ漫画家が4ページでマンガを描いたらやっぱり起承転結で面白いグルメ漫画

新婚の漫画家のネガティブ男とポジティブな女、下げてから上げるオチでクスリと笑える。1話4ページの起承転結がうまい、2人の距離感、しょうが焼き、たこ焼き、鶏じゃがと言った食事の価値観の違い、はたまた買い物、赤提灯などの新婚食生活の端から端まで面白い。

ぶっちゃけ、人の思考や人の家庭を覗き見るのは何ともいえない。

 

 

【あらすじ】

新婚になったばかりのネガティブな男とポジティブな女、結婚するまでチャンスがなかった料理を作ってもらう。初めての女に料理である。しかし、今まで機会がなかったから知る機会がなかったが女は料理ができるのか?それとも料理が出来ないのか?わからない、分からないこの不安を男は正座しながら料理の完成を待つのであった。(1話の出だし)

 

【作者】小坂俊史
【発行】竹書房

 

【登場人物】

小坂俊史
妻(王嶋環)

 

漫画の感想

グルメ漫画も気づけば多彩なジャンルに枝葉されてきた。このグルメ漫画は作者の食べ物に対して価値観を語る思考グルメというジャンルとして分類した。

作中では食事の美味さは語られない、よしんば美味さを語っているときは今置かれている状況での美味しさを語っている。そのためどのように美味しいのかは語られていない。要するにミスター味っ子のような多彩な表現での美味しさへの語らない。

漫画のメインは小坂の食や環境に対してのネガティブ思考であり、ポジティブな妻がツッコミが入る分かりやい落差を楽しむように出来ている。

殆どが決まったパターンを1話4ページと分かりやすくまとまっておりなんとなく読むことができるのも良い点だと思う。

この漫画の登場人物が小坂だけなら、彼の思考への共感はするかもしれないが漫画の印象はネガティブに終わってしまう。そこへ妻の投入でポジティブがオチが作られていることで作品の帳尻を取られている。

2人の登場人物がいるからこそ、この漫画を楽しめる人の層は広がる。

作中で、もっともよい味を出している妻を面白いキャラとして描いてはいるが、どんな話でも基本的には妻を立てている。それが2人の立ち位置を明確にしているのだが、たまに立ち位置を崩すことによって”クスリ”と笑いが生じる。

 

ちなみに
私が読んだ中で一番気に入っているのは、18話目のお肉の値段を告げる妻の白黒の演出が一番のお気に入り。

カレーの肉に4000円は半端ない!!

寝る前に2,3話読むとクスリと笑えるから何だかんだでかなり読み返している気軽さがいい。

 

【目次】

1皿目 しょうが焼き

妻が初めて料理する話。小坂は妻は料理が出来るのか?それとも出来ないのか?悶々と悩むだけで2ページを消費している。たった6ページしかない1話だというのに、その悩む間には2人の今までの生活の情報がしっかり入れ込まれている。よく見ると遠距離交際であった妻が住んでいた場所も殆ど簡略された背景にしっかりと描かれている。

 

2皿目 雑炊

カゼを引いた小坂のお米に対する好みついての話。お米というよりも食べ物の好みの話なのだが、1皿目からにじみ出ている妻の優しさを描くのがうまい。内容以上気になったのがに作者、妻と一緒のベットで寝てやがる。

 

3皿目 たこ焼き

妻の出身地の名物であるたこ焼きの話。4ページしかない中に小坂の食べ物についての趣向についての考えが差し込まれ、親近感や共感を抱かせるような情報がさらっと入れられている。
たった4ページなれど、起承転結がしっかりと1ページで行わている。

起 ホットプレートを購入して、
承 なぜたこ焼きが食べたいのか
転 妻とのたこ焼きを格差
結 自分的には上手くできたたこ焼き

関西の人は本当に家でたこ焼きを作るのか、都市伝説ではなかったのか・・・

 

4皿目 ベーコンエッグ丼

妻が忙しいときに小坂が台所に立って作った料理の中で、唯一、妻のレパートリーに入ったベーコンエッグ丼の話。妻にベーコンエッグ丼を認めさせるために高級なベーコンや卵を使っているのに最初に出てくるベーコンエッグ丼と絵が同じなのが残念。
この家のベーコンエッグは胡椒なのか、自分は醤油で食べるななんて思ったり

 

5皿目 パン祭り

春のパン祭りのために食パンを消費する話。10年当たったことがない男が妻を加えて2人でパン祭りに挑む。

パン祭りて応募すればお皿のセットが絶対に当たるのかと思ってた。

 

6皿目 鶏じゃが

妻の牛肉に対する趣向が邪魔して食卓に並ばない。高いハードルを越え妥協して肉じゃがを食べる話。夫婦で毎日食べる食事の食い違いという難しい問題を解決しそこにさらなる問題を被せて来るのがうまい。

男にとっては女性に作ってもらいたい料理「肉じゃが」それを食べるための妥協を見ているが絵だと煮物に見える。

 

7皿目 袋ラーメン

妻が作る袋ラーメンへの一手間に打ちのめされ、さらに袋冷やし中華でも一手間掛けた冷やし中華の錦糸卵に打ちのめされてる話。

袋ラーメンに何も入れない自分としては小坂への共感するためこの話は特に好きだ。子供のころを思い出すと親が作ったラーメンにはしっかりとした具があったな。

 

8皿目 角煮

角煮が食べられないことへの苦しみと妻への申し訳なさの話。

角煮の灰汁をとる作業のめんどくさいことをやっているときに他に人が奥の部屋でテレビを見てると怒りをいだく。

 

9皿目 牛丼

夜1人で牛丼を食べる話。面白いのだけれども牛丼やうどんに思い出がないので他の話に比べると魅力が足りない。

それでも面白いんですが、最後に妻の漫画「ごほうびおひとり鮨」のCMが入っているんでとりあえず1巻だけ買って読んでみた。

 

10皿目 肉味噌そぼろ

レタスを減らすためにいろんな料理の末に肉味噌そぼろをレタスに巻く、ただそれだけながらもレタスを減らすための肉味噌そぼろ、ご飯を食べるためにも肉味噌そぼろを食べるこの分配を2人で揉めつつ食べる。その問題をコミカルに描かれている。

もちろん、オチもしっかりとある

 

11皿目 鉄板焼きそば

妻が忙しいために小坂がホットプレートで焼きそばを作る話。焼きそばは麺を切った野菜に混ぜてソースをかけるだけで十分においしい。この簡単でおいしさにネガティブな小坂がめんどくさいことを言い出すところが面白い。
そのきっかけとなった妻の手の汚れを最初ソースの汚れと思ってしまったけれども、その時の話の流れから違うことに読み返して理解した。あれは漫画を描いているときの汚れか。

どんな漫画もそうだが読み返すと漫画家の1回目夜2回目だけでは気づかない伏線が見えてくる。

 

12皿目 唐揚げ

である唐揚げを食べようするが、そこには二人のトラウマが立ちはだかる話。

今まで唐揚げを失敗したことが1度もない自分としては小坂のように消す炭にするという調理をする方法が分からないのでそういった話を見るとなぜ?ということに不思議に思ってしまう。

 

13皿目 お買い物

買い物の話なのだけど、小坂のネガティブ思考とプライドの話なのだけど、小坂がレジにインスタントだけを持って行ったときにレジのおばちゃんへの今の俺は違うんだという気持ちを抱き悶々とする。

この気持ちは痛いほど分かる。分かってしまう。ちっぽけなプライドであるけれども、普段の自分の食生活はしっかりと野菜を食べているんだということを伝えたくなる。
相手は自分のことを気にしていないどころか客がインスタントを買っているだけ、下手をしたら人として認識してないロボットのように処理されているだけかもしれない。
こちらの自意識過剰なんだから。

 

14皿目 ケーキ

角煮のときのように、料理中の台所を覗きケーキの禁断情報であるケーキに使われる砂糖の山を見しまい、ケーキの甘さ秘密が「罪の味」であることを知る話。

「罪の味」は最後のオチのためのネタなのだけれども、妻も「罪深い香りだね」と伏線を入れているの。文字を1つ1つをじっくり読まずに視線を流れるように読んでいると、あまり使われることのない罪という文字が意識されて妻の発言と、そのあとに小坂が罪という言葉が最後のオチをより面白くしている。

 

15皿目 レシピ漫画

レシピ漫画に熱中する話。グルメ漫画の料理のレシピを実行している場面を見ているとNHKの「2次元グルメドラマ 本棚食堂」を思い出す。漫画のレシピを作っている人がいるんだという気持ちと、自分も子供のころに漫画「OH!MYコンブ」のレシピを真似して酷い目にあったことが懐かしい。

レシピの漫画のてこ入れの心配をするのが漫画家らしい。

 

16皿目 クリームシチュー

小坂が考えていたクリームシチューの作り方とと実際の作り方の違いが解き明かされる話。やっぱり小坂はめんどくさい。
この話で初めて表紙に出ている鍋について触れられたが、目次を見る限り鍋の話がない。きっとネタにできなかったんだろうということに気づかされる。

 

17皿目 カップ焼きそば

カップ焼きそばをいつの機会に食べるのかを得々と説明している話。
一平ちゃんショートケーキ味は食べてみたい気がする・・・

 

18皿目 カレー

漫画家小坂にとってのカレーは非常食、一般家庭のように幸せな食事ではないという話。
この話で小坂がカレーを作っている話に触れている。ここでは鍋を前にしてカレーが煮込んでいる。クリームシューの話の時に、妻にシチューを作ってもらってひどく感謝をしている理由が分かる。
妻にとってはシチューは偶に鍋を混ぜるだけでいいという認識に対して、今回のカレーを作る小坂は鍋の前でカレーをずっと見ている行動から2人の意識の違いである。

オチの二人の牛肉格差が面白い。

 

19皿目 赤提灯

お酒を飲まない二人がおでん屋に入る話。

 

20皿目 朝ごはん

小坂がめんどくさいことを言い出す話なのだけれども、隣の芝生は青く見えるのか次の日には前言撤回する話。
漫画の中の小坂の気持ちが結構わかる自分も実はめんどくさい人だったことに今気づいた。

 

21皿目 おしゃれメニュー

おしゃれ料理を妻が作る話なのだけど、あの料理があんなに簡単にご家庭で出来ることに驚いた。もっとめんどくさいイメージがあったのだけど、あんなに簡単にできるのか。

そんな感想、あの料理は漫画を読めば分かる。

 

22皿目 立ち食いそば

深夜に”かけそば”を食べるそのうしろめたさに言い訳を延々と積み上げていく話。
深夜に営業しているチェーン店は数あれど、カロリーを気にして”かけそば”を食べに行く。深夜の間食には背徳感がある。そこそこ食べても寝て起きれば朝食は普通に食べることができる。そのことが分かっているから深夜に暴食することに魅力があるので、言い訳を重ねて食べる。深夜の間食を行うことの罪悪感はだれしも抱く気持ちじゃないだろうか。

作中に時間が分かる物が出てくる、そのために作中の時間の流れを考えつつ読み直してみた。家を出たのが1時55分、移動に10分買い物に10分ぐらいだろうか、富士そばで券を買ったのが2時19分、おそばを食べたのが10分、帰りにまた10分、合計で40分か50分ぐらいかな。

 

23皿目 マルチタスク

妻のマルチタスクと小坂のシングルタスクの話なのだけど、料理の話は段取り能力の話になっている。

 

24皿目 坦々麺

テレビの影響で坦々麺を食べたくなった妻が坦々麺を作る話。

 

25皿目 そうめん

夏に”そうめん”がわいてでないから食べられないという話だけれども、これは自分が人から贈呈品として定期的にもらえる物を共感しやすい。自分で考えるとお米が定期的にもらえると考えると共感をもてると思う。

 

26皿目 縁日焼きそば

お祭りで買った焼きそばをその場で食べる話なのだけど、小心者にしかわからない道べりに一人座って食べる苦痛を避けるために2人で座って暖かい焼きそばを食べる。

1巻のうちに焼きそばの話が3回も出てくるというどれだけ、焼きそばが好きなんだと思うが、自分もお好み焼きだったら同じことをするのではないか。そんな気がする。

 

描きおろし

2人の大学生時代の食生活の話。お金がない学生時代の食べ物の創意工夫をしているはずなのだが、どうしても小坂の話に工夫を感じられないけれども、同じような食生活をしたことがあるのでついつい共感してしまう。

そういえば、パスタにお茶漬けは漫画「OH!MYコンブ」でてきたな。

 

 


新婚よそじのメシ事情

小坂俊史 (著)
出版:竹書房
ネガティブな男とポジティブな女の新婚生活を4ページの起承転結で面白おかしく描いた食にかかわる生活をノンフィクションショート漫画

 

⇒グルメ漫画 新婚よそじのメシ事情の表紙の考察