日本で一番発言を考えている人はだれだろうか?
議員か?
いやいや、問題発言や国会でのヤジ、子供には聞かせられないような言葉を平然と言っているではないか。
大臣か?
言わなくてもいい失言で大臣を辞めた人は数限りなくいるではないか。
総理大臣か?
歴代の総理の中にもなぜそんない言い回しをするのかわからないが問題な発言をする人物は何人いるではないか。
芸能人、企業家や弁護士、テレビのアナウンサーまでなぜそんなことを言ったの理解できない問題な発言をする人たちが山のようにいる。
では言葉を最も考えて発言している人は誰かと考えると。
天皇陛下ではないだろうか。
マスコミや週刊誌がバッシングをしないだけではないかという考えもあるかもしれない。過去を見るとバッシングによって皇后陛下は失声症を患われたこともあるのだ。
日本のマスコミは天皇家であろうともバッシングなら平然とする。
そんな中で、天皇陛下の発言が問題になったという話は聞いたことがない。
天皇陛下は国事行為や公的行為を合わせると年間で1500件以上参加される。その度に何らかの”おことば”を残されている。
年に1回記者会見だってある。
多くの言葉を残されているのに、問題になったことがない。
そのような天皇陛下がどのような”おことば”を残されたかがこの本にまとめられている。
また、その言葉の裏にはどのような意図があったのかの解説を読むことで、”おことば”だけでは分からない込められた思いを理解することが出来る本である。
【内容】
生前退位の意向を示された天皇陛下の「おことば」が大きくクローズアップされましたが、震災直後などこれまでも折にふれ、そのお人柄がよくわかる印象的なお言葉を発せられてきました。天皇に即位されてからはもちろん、皇太子時代までさかのぼり、発せられた背景の解説とともに紹介します。
Amazonからの引用
【作者】高森明勅(タカモリアキノリ)
(日本の評論家、神道学者、歴史家、皇室研究者)
【発行】双葉社
【ジャンル】 ジャーナリズム
【感想】
テレビで天皇陛下が取り上げらることはほとんどない。たまに自分の棲んでいる地域に来たことを地方局で取り上げられるぐらいではないだろうか。
バッシングを受けるような行動や発言をしないのでテレビに取り上げられない。
数少ないテレビで取り上げられるのはフジテレビの皇室ご一家という番組ぐらいだろうか。
最近テレビで見たのは生前退位のビデオメッセージと、悲しい出来事だが熊本の地震の際に国民に向けての”おことば”がテレビで放送された時だった。
考えると良くも悪くも大きな出来事がなければ天皇陛下の”おことば”がテレビなどで取り上げられることもない。そのためどのような発言をされているかを知るような機会は意外と少ないことに気づいた。
この本ではそんな明仁天皇の”おことば”を結婚前の皇太子の時代から現在の2017年までの流れに沿って選び抜かれた言葉が取り上げられている。
内容は皇太子時代に何を考え、天皇とはどのような存在であるべきかを考えられていたか。天皇に即位されてからは国民とどのような関係を築こうとしていたか。そしてなぜ生前退位という考えに至ったかの考えが分かってくるように編集されています。
多くの”おことば”を残されている中で、明仁天皇が天皇とはどうあるべきか。国民とよりそっていくべきかの”おことば”を取り上げられています。
この本を読めば、明仁天皇が生前退位に思い立ったかが分かってくるのではないでしょうか。
昭和天皇は憲法にのっとってがっちりと決められたことをやることで天皇として責務を行いました。しかし、明仁天皇は「ロボットになることも必要だが、それだけであってはいけない。」と述べており自らの考える天皇の深く模索されていたことが分かってきます。
憲法学者は天皇は『ロボット的存在』でなければならないと明言される時代に、憲法を守りその制約のなかで新しい天皇の在り方をみつけられたのでしょう。
だからこそ、生前退位に思い立ったのかという考えが分かってきたような気になりました。
”おことば”として皇太子から今現在まで一貫として『国民の幸せを願って、国民とともに歩む』という考えに貫かれており、18歳の時から80歳を超えてなお、同じ考えのもと天皇とはどうあるべきかが早い段階で決まっていてどう実現していくかを今も考えられています。
60年以上、1人の”おことば”を見ていくと変化として、若い頃は力強さのある感じから、だんだんと柔らかさを帯びたものになっていきます。
”おことば”の内容には気を使われているのは変わりませんが、言葉への配慮の仕方が変わってきているのがわかってきます。
時代や年齢に合わせた言葉を選びながら常にどのようは”おことば”をおっしゃられるかを考えていなければあのようなおことばは出てこないでしょう。
解説では天皇陛下の出来事にふれており、皇后には一度振られていたり、3歳のころから両親とは離れてい暮らしていたり、火炎瓶を投げられるという出来事が書かれています。
火炎瓶をなげつけられるとか1年に1500件以上のご公務されたりと天皇という存在の大変さと偉大さを感じさせられます。
どんな”おことば”があるのか見てみましょう。
「ともどもに、よい判断とモラル・バックボーンのある人になりたいものです。」
明仁天皇が18歳の皇太子時代に言われたおことばです。
公務を行うようになって、同世代へひと言を求められたときのおことばです。
”ともどもに”とは国民と皇太子としての自分と言うことなのでしょう。
なので、「私とあなたたちともに判断する力と道徳を身に付けていきましょう」ということを述べられました。
とても18歳の発言とは思えませんが、天皇は間違いなく判断力も道徳も身に付けられた存在になられたのではないでしょうか。
では同世代の国民はどうだったのでしょうかと考えさせられます。
一番、分かりやすく心にきたのは”おことば”として
「言ったことは必ず実行する。実行しないことをいうのは嫌いです。」
31歳の誕生日を迎えられてのご心境を記者から質問されて
「何歳と言う区切りを言うのは私の趣味には合いません。一日一日を大事だと思います。」
「そして、言ったことは必ず実行する。実行しないことを言うのは嫌いです」
と述べられています。
天皇の真っすぐな人柄、だれもがそういう生き方をしたいと願うおことばであると感じます。
天皇と言う悪い言葉でいえば日本の生贄として大変な役目をされ、理知的で信念のあるおことばを残されています。
あなたにとっての天皇がどういう存在であれ、重い立場で常に発言を考えていた人物の言葉に思いをはせるのはよい本なのではないでしょうか。
おまけ
本の中で「皇室の伝統を見ると、「武ではなく、常に学問でした。」とおことばを述べています。
実際、明治天皇も海洋学で新種のヒドロ虫類を多く発見され、研究の発表している生物学者の顔をもっていました。
明仁天皇もまた魚類学者として研究の論文を発表されており、変わったものでは皇居内に生息するタヌキの食べ物についての論文『皇居におけるタヌキの食性の長期変動』を発表されています。
皇居におけるタヌキの食性の長期変動
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007185436