1991年に突如と崩壊したソ連、その突然の崩壊故に壊されることもなく開発されることもなく残り佇んでいる廃墟や軍事施設が時間によって物悲しく心惹かれる写真集
 
まずはソ連と略されているが正式名はソビエト社会主義共和国連邦と呼ばれユーラシア大陸のロシアを中心とした周辺の国が社会主義のもとに連邦国家としてアメリカと対立する思想の国家として成り立っていた。
 
そんなソ連は1922年に成立して1991年に様々な問題が浮上して崩壊した国家、今の似たようなユーラシア大陸の隣のヨーロッパ大陸に存在するEUのような国家が集合した組織を思い描いてもらえればいいかもしれない。成り立ちも存在意義もかなり違いますが。
 
ソ連は第二次世界大戦後、アメリカとの思想の違いから険悪な関係となります。表立って戦争をしないながらも机の下では相手の足をけるような行為を延々と続ける冷戦と呼ばれる長い対立が始まり、それに伴ってアメリカに対抗するための様々な軍事の開発や設備が作られました。
 
冷戦は45年から89年までの44年間という長い期間続き、その間に様々なことが計画されましたが冷戦が終了とともに多くのものが終わり、ソ連というユーラシア大陸いっぱいに広がった連邦国家も突如として3年後に崩壊した。
 
突然の崩壊に様々な施設や計画が投げ出されたために、国家のエネルギーを担うはずだった未完成な原子力発電所、アメリカと競っていた宇宙開発の施設、そして様々な軍事関連の施設や放置されて野ざらしになっている兵器数々。
 
當津善の出来事だからこそ様々なものがそのまま残ってしまった施設をモスクワ近郊で育ったラナ・サトルによって廃墟独特の埃ぽい空気が伝わってきそうな静寂と廃退を写真から感じることができる。
 
未完成な原子力発電所はほとんど完成しているようにしか見えず、埃を払えば今にも動き出しそうな管理がされているようであり、かたや海軍の分析センターのパラボラアンテナは厳しい環境のなかで野ざらしのためコンクリートが一部剥げて金属本来の輝きは失われた姿からは長い時間を見受けられる。
 
軍事の兵器として本来は使用されるはずだった航空機などの兵器は野ざらしになっておおり、プロジェクトが未完成として終わった軍用機、今でも使用している国がある兵器が不完全な状態で草の生い茂った中に放置されたすがたには哀愁を感じる。
 
ほとんどが廃墟の写真となっているが、旧ソ連の遺産がメインテーマとなっているために今でも使用されているロケットエンジン工場の写真も掲載されているが、こちらは人の管理があるため整然とし、隅々までライトが照らされ人の存在を感じることができる。
 
未完成で終わった施設や使用されなくなった軍事施設からは廃墟としての独特の美しさがあり、今でも使用されていたり管理されている施設の写真からは建物が耐え抜いた時間と人間の存在を感じることができる。
 
写真を見ているとその場に行ってその場の独特の空気感を感じてみたいと思わせる写真のレイアウトと廃墟と管理されている施設との明暗があるからこそ、心ひきこまれる写真の数々が繰り返し見てしまう。
 
 
 
【著者】 Lana Sator(ラナ・サトル)
【発行日】2017年10月15日
 
【発行人】 塩見正考
【編集】 関口勇
【発行所】株式会社三才ブックス
【ジャンル】アート・写真集
 
 
 
【目次】
・RADOME AND PARABOLA ANTENNA(レドームとパラボラアンテナ)
宇宙防衛システムのレドームとパラボラアンテナ、トーチカのような施設の上にあるアンテナ
レドームとはアンテナをその構造をもって保護する施設のこと
 
・UNFINISHED NUCLEAR POWER STATION(未完成の原子力発電所)
夜の原子力発電所の外見、未完成の原子力発電所の内部
 
・MILITARY AIRCRAFTS(軍用機)
MiG-25戦闘機、Mi-攻撃ヘリコプター、An-12輸送機、M-17高硬度偵察機、WA-14エクラノプラン、エンジン内部、Tu-144(ソ連の高音速旅客機)
 
・UNFINISHED NUCLEAR HEATING PLANT(未完成原子力加熱プラント)
非破壊検査用の機械、原子炉の構造図(AST-500 発電用ではなく地域暖房用に設計)、基盤の抜かれた中央制御室、AST-500の保護容器
 
・ROCKET ENGINE FACTORY(ロケットエンジン工場)
こちらは廃墟ではなく現在でも施設が運用されているロケットエンジンテスト施設、表紙に描かれていた円盤状の施設は試験時に高温ガスを冷却するための巨大プールと使用される設備、燃焼実験時に発生する燃焼ガスを冷却した後に煙突から排気するようになっている、今も使用されている施設のため廃墟独特の野ざらしの汚れがない。
 
・NUCLEAR WEAPON STORAGE FACILITY(核兵器貯蔵施設)
岩山の中をくりぬいて作ったと思われる外見だが、廃墟となっているので風化の色合いがつよい。外観には換気塔もあるが外見からは核兵器貯蔵施設には到底見えないように作られている。冷戦時代として攻撃をされないためにか内部は何重にも熱い防壁の扉があるが外見は小さな小屋のような建物となっている。掲載されている巨大な鉄の扉に少し風化しているハザードマークが壁の色と同じながらも独特の恐怖をかもしだしている。
 
 
・MILITARY VEHICLES(軍用車両)
軍用トラックを改造したブルトーザー、塹壕を掘るための工兵車両、戦車やロケットを発射できる車両があるがすべてパンクしている。
 
・UNFINISHED NUCLEAR HEATING STATION(未完成核発熱施設)
原子炉格納容器、未設置の巨大な鉄の扉
 
・MILITARY EQUIPMENT(軍事装備)
軍用トラックに様々な機械の基盤、そして対空ミサイル