1991年、ソビエト連邦(いわゆる旧ソ連)は突如として崩壊しました。
その“急な終わり方”のせいで、未完成の施設や、役目を失った軍事設備が、壊されもせず、開発されもせず、ただ残ってしまった場所があります。
今回紹介する写真集『旧ソ連遺産 ロシア軍用ロケット工場潜入!剝ぎ取られた秘密のベール(ワンダーJAPAN編)』は、そんな「帝国の残り香」を、静寂ごと閉じ込めた一冊です。

この記事の要点
- 旧ソ連の「突然の崩壊」が、未完成施設や放置兵器を“そのまま”残した
- 廃墟の静寂だけでなく、現役ロケット工場の「人の気配」も収録されている
- 目次を理解してから見ると、写真の“怖さ”と“美しさ”が一段上がる
作品データ(メモ)
- 著者:Lana Sator(ラナ・サトル)
- 発行日:2017年10月15日
- 発行所:株式会社三才ブックス
- ジャンル:写真集(廃墟・ミリタリー)
※上記はご提示原稿(奥付メモ)ベースです。版によって表記が異なる場合があります。
なぜ旧ソ連の廃墟は、こんなに惹きつけるのか
ソ連(正式にはソビエト社会主義共和国連邦)は、1922年に成立し、1991年に崩壊しました。
第二次世界大戦後は、アメリカと「思想の違い」を軸に対立し、いわゆる冷戦の時代に入ります。
表立った戦争は避けながらも、軍事・宇宙・エネルギーに莫大な投資が行われました。
ところが、冷戦が終わり、国家そのものが崩壊します。
その結果、「途中まで作ったもの」「もう使わないもの」が、一気に放り出されたんですね。
この本が映しているのは、まさにその“放り出された現場”です。
未完成の原発、野ざらしの軍用機、そして核関連施設まで。写真なのに空気が乾いて見えます。

本書の強みは「廃墟」だけじゃないところです
廃墟写真集は、だいたい「静か」「寂しい」「美しい」でまとまります。
でも本書は、そこに現役で運用されているロケットエンジン工場が入ってきます。
廃墟パートは、埃っぽい静寂と、時間の重さ。
現役パートは、整然とした管理と、ライトに照らされた“人の気配”。
この明暗があるからこそ、廃墟の哀愁がいっそう深く見えてきます。
「ただの廃墟カタログ」で終わらないのが、良いところです。
目次と見どころ
RADOME AND PARABOLA ANTENNA(レドームとパラボラアンテナ)
宇宙防衛系の設備。
レドームは、アンテナを風雨や外部から守るための保護構造(球体のカバーなど)です。
UNFINISHED NUCLEAR POWER STATION(未完成の原子力発電所)
外観だけ見ると「もう完成してるのでは?」と思うほどの規模。
だからこそ、人の不在が刺さります。
MILITARY AIRCRAFTS(軍用機)
MiG-25戦闘機、攻撃ヘリ、輸送機、超音速旅客機Tu-144など。
草むらに沈んでいく“機械の哀愁”が、ここで一気に来ます。
UNFINISHED NUCLEAR HEATING PLANT(未完成原子力加熱プラント)
発電ではなく地域暖房用として設計された構想(AST-500)。
制御室の「抜かれた基盤」みたいな絵が、地味に怖いです。
ROCKET ENGINE FACTORY(ロケットエンジン工場)
ここは廃墟ではなく、運用されている施設。
表紙の円盤状の設備は、試験時の高温ガスを冷却する巨大プールとして使われる、という説明が入ります。
“汚れていない写真”が逆に異物感になります。
NUCLEAR WEAPON STORAGE FACILITY(核兵器貯蔵施設)
外見は小屋のようでも、内部は分厚い扉が何重にもあるタイプ。
風化した壁に残るハザードマークが、薄いのに強烈です。
MILITARY VEHICLES(軍用車両)
ブルドーザー化した軍用トラック、工兵車両、発射車両など。
すべてがパンクして止まっている感じが、妙にリアルです。
UNFINISHED NUCLEAR HEATING STATION(未完成核発熱施設)
原子炉格納容器、未設置の巨大扉など、“完成しなかった構造物”の迫力があります。
MILITARY EQUIPMENT(軍事装備)
基盤、機械パーツ、対空ミサイルなど。
「物」だけが残る終末感が出ます。
この写真集が刺さる人
- 廃墟写真集が好き:静寂と埃っぽさがしっかりある
- 冷戦・ミリタリーが好き:“何の施設か”が分かると面白さが増す
- 旅に行けないけど空気を吸いたい:現地の乾いた気配が写真から伝わる
まとめ:行けない場所ほど、写真集が効きます
旧ソ連の軍事施設は、現地に行くハードルが高いです。
だからこそ、写真集で「空気ごと持ち帰る」価値があります。
廃墟の静寂と、現役施設の人の気配。
その対比が、ページをめくる手を止めさせません。
気になったらまずは検索リンクから、表紙と試し読み(できる場合)だけでも覗いてみてください。
対象期間によっては、読み放題の対象になっていることもあるので、その点だけは購入前に確認がおすすめです。





