ライトノベル 『竜殺しの過ごす日々』最強系異世界ものでありながら、突如変わった生活へ戸惑いと順応を描いた作品。
偶然に次元のはざまに落ちて異世界行くことになった幸助、落ちた先には異世界を脅かす黒竜にたまたま偶然に直撃。偶然に偶然が重なるものでその一撃はクリティカルヒットとなって神にも匹敵する強さを持つ黒竜も弱点を攻撃されたことで死んでしまう。
偶然に偶然が重なって起きた奇跡的な出来事のおかげで、幸助は異世界でもトップクラスの強さを持つ存在になる。
いきなりの異世界で右も左もわからない中、黒竜のいけにえとして死を待つばかりの捧げものとなっていたホルンに連れられて魔女エリスのもとへ、世界三番目の竜殺しとして異世界の生活を始めることになるのだった。
キンドルアンリミテッドに入っているなら全巻読めるようになっている(2022年3月現在)
【タイトル】竜殺しの過ごす日々 (全11巻)
【作者】 赤雪トナ
【イラスト】碧風羽
【出版】主婦の友社
【レーベル】ヒーロー文庫
感想と雑感、作品の目次と内容のかきとめを書いています。
【感想と雑感】
初めて読んだのが小説家になろうのサイトをそこそこ読むようになったことに出会った作品だったように思える。まさに最強系異世界転生の分類に入るんだろうけど、死んでないから転生ではないか。
ヒーロー文庫で1巻が出てから全11巻とかなりの巻数が出ているところを見ると作品自体の人気もあるが、まだまだインターネットで小説を書く人を使い捨てにしてはいない時代だったこともあるのかもしれない。小説家になろうで最初から最後まで追い続けたのだからやはり自分の中ではかなり楽しめたのかもしれない。
作品は今読めばなろうにある作品からそれほど大きく型が外れた作品とは思えないが、当時は無敵になればあっという間に調子に乗って、力を隠していても気づけば有名人とい
う
展開が当たり前といった作品の中で少し変わった作品として読んでいた。
1巻を読んでも大きく感情が動くような盛り上がりもなくとも面白さをしっかりと作れていたことから続けて読んでいられた。どうしても読みたくないって久しぶりに1巻を読み直してもこの小説の盛り上がりはどこなのかと聞かれると今のライトノベルに慣れた人なら最強になってあっという間に強くなったところとなるのだろうが、その強さをひけらかす場面はラストの「10.依頼」までない。
小説の1巻のラストにしては当たり前の展開であり、最強の力を使うのは小説のラストでの活躍ぐらいで少しだけ盛り上がりがあったぐらいの印象しか残らない。1巻を読んでその日のうちに書いているのにそれほど頭の中に思い浮かばないということは、それほど激戦でもなければ”俺強い!!”という印象のある戦いではなかったということだ。
それでも作品としての面白さがあったという感想が出てくるのだから作品全体を通して感じる面白さがあったということだ。
この作品の面白いと感じたところを考えると、異世界での神という存在の設定だろうか。
幸助がたどり着いた世界では神がいる。ライトノベルを読んでいる私たちの世界に神がいるかどうかはわからないが、彼が行った異世界では神の存在が確認されているそれゆえ宗教の力がない。
現実では神の姿が未確認故にその権力は国をも動かす宗教という現実の影響力とは違い、神が存在しておりその神を崇める組織に興味がなく、自分の気に入った存在にだけ注意を向ける存在である。現実では宗教家が神に最も近い存在なのだと考えるからこそ強大な権力を持っているのに対して、小説の中での神様は自分たちの興味のあるものにしか反応しないというのはなかなか面白い設定である。
一神教というよりも多神教の考えが基準になっているように思える。
魔法も魔力があるから魔法が使えるのではなく魔力は魔法を使った時の世界に歪みを直すために使われ、魔法の現象は個人で起こすのではなく世界がお願いされ、魔力という対価を払うことで起こしてくれるという少し入り組んだ設定を異世界に来たばかりで何もわからない幸助に教えてくれるエリスとホルンの役割によって読者もこの世界が自分たちが小説家になろうでよく読んでいるふわっとした設定の小説ではなく、ジュブナイル程度には設定がしっかりとしていることを読者に見せる場面は重要に思える。
魔法や宗教、世界の説明を数ページにわたって使っているおかげで小説での中の世界観が読者に伝わり少しだけ深く物語に潜り込んで読むことができるようになっていることが作品の面白さを広げているのはないだろうか。
なろう小説と呼ばれるジャンルによくあるいきなり最強になって最強の力の説明はやる割に世界観の説明や主人公以外のキャラクターの心の変化を少しでも追いかけているところは2010年代のライトノベルとしては内容の情報量が違うように思える。
目次と内容のまとめ
■ 竜殺しの過ごす日々 第1巻
一章 落ちて異世界
1.偶発的人間魚雷
・いきなりにしてクライマックス、異世界に行ってそして空から落ちて竜を倒す、偶然に偶然が重なる。
2.知り合いは魔女
・魔女エリスのもとへ、いけにえになっていたホルンとともに訪れる。1巻ではあまり活躍いないけれども、読む限り裏方としてはかなり頑張っている人物。
3.偶発的超人誕生の開設
・竜を倒して大幅レベルアップ、異世界といえば生物の生命力吸収。
二章 始まる異世界生活
4.勉強、運動、また勉強、そして実践
・幸助が来た異世界の設定というか世界観をそれとなく読者に。
5.称号竜殺しの効果の一端
・称号で竜殺しを獲得したことで、その効果としてなんでも間でも簡単に身に着けてしまうという素晴らしいスキル。技能スキルがあるったのならあっという間に最大レベルまで上げてしまうというチート。
三章 街へお出かけ
6.試験な旅立ち
・町に行って生活をすることを覚えるために町へ行く途中に魔物と遭遇、日本に生きていた人物としては生物を殺すことへの忌避感と葛藤。
7.初めての仕事
・いきなりばれたくない称号竜殺しがスキルの力によってばれるがそれはどうにかこうにかして、初めての冒険者の依頼は薬草を取りにというどの小説でも大体最初やるお使いイベント、大抵は大きな出来事に巻き込まれるのだけど特になし。
8.冒険出ずになんでも屋
・そとの仕事をしなくても金が稼げる事実に気づいてしまう幸助、ひたすら街の中の雑事でお金を稼ぐことに。
9.幸助と冒険者たち
・雑事しかしない幸助を小銭あさりと見下す冒険者たちといつまでも処理されない仕事を処理してくれるありがたい存在として認識しているギルドという、複数の視点ではあるものの基本的にテンプレ
四章 帰る前の騒動
10.依頼
・1巻のラストなので少し物語を盛り上げてはいる出来事ではあるもの
■ 竜殺しの過ごす日々 第2巻
五章 ホルンのお見合い
11.変装・潜入・わたし綺麗?
・ホルンのお見合いの話が浮上してくるなか幸助はホルンの護衛としてメイドに化けて貴族の屋敷に潜入する。幻で姿が変わったように見える魔法で女性に変身する。この辺が魔法の便利設定、ところで実際に姿を変えてしまう魔法もあるという話が出てきたけど、以降ででてくるか?
12.家政婦は見ていなかった
・いい人だけど変な貴族の登場と事件が起きても、幸助は一切関与していないで気づけば事件が解決していたのでサブタイトル通り『家政婦は見ていなかった』、家政婦は見た!のパロディタイトルだけど、今の若者はどれだけわかるのやら。
六章
13.善行めぐって騒動の元
・1巻の中に込められたフラグ、1巻のラストで幸助が街を離れる時に見たゆがみが、成長してゆがみがウィアーレに取りついたために街中の人が変な人たちだらけになってしまう。幸助の人間関係のフラグを確実に積み上げていく。ホルンの件やウィアーレのかかわり方を見ていると作者は女性関係の心の変化に対して気にかけているように思える。
七章
14.ダンジョンアタック!
・ボルドスに誘われてダンジョンに挑戦することになった幸助、不思議なことに進めば進むほどに罠が難しくなっていくという不思議なダンジョン、ボルドスの怪しい言い訳とギルドの影。実はギルドが準備した訓練用のダンジョンだった。
15.古きヒーロー、異郷に参上
・ダンジョンからの帰りに助けた立ち往生していた馬車を助ける。彼らは軽業や演劇をする旅の一座、幸助は彼らに戦隊ショーを新しい演劇としてやってもらおうと教える。幻を見せる魔法で変身したように見せることに、そしてウィアーレにゆがみの残滓が残っていることから幸助が監視として預かることに。
16.人工ではない天然遺跡へ
・ギルドお訓練用のダンジョンではなく、今度は本物のダンジョンにほかの冒険者グループとともに行くことになる。今までは優秀な人物との交流しかなく、今回初めて一般的な冒険者との初めての交流があり、彼ら実力と幸助の実力の差が描かれる。
八章
17.行ってみよう隣の大陸
・エリスが迎えに来てほかの大陸へと幸助を誘う。エリスとウイアーレとの初めての対面とエリスの称号『一夜千殺』の由来とエリスの幸助に対する感情の変化
18.のんびり神域ぶらり旅
・薬草を求めて神域にはいることに、そこでリンという少年に出会い一緒に行くことになる。