生死がわからない子には動物が母親に会いに行く話として、少し黄色がかった淡い色合いでやさしさを感じる絵本。大人が読むと母の愛、子供の気遣い、自分の夢だったりと約20ページをうがった読み方ができる。
作品を通して命を大切にしてほしいという気持ちは伝わる作品
【タイトル】もうじきたべられるぼく
【作者】 はせがわゆうじ
【発行】2022年8月10日
(購入する際は電子書籍か実物の本の購入ページかご確認ください。)
● 感想【ネタばれあり】
少し黄色がかったあたたかな淡い色合いの絵で描かれた絵本。
成長した牛が食べられる前に母親に会いに行くお話、電車に乗って窓から空を眺めながら本当はなりたかった自分を思い描き、母親のいる牧場での懐かしさとこれから食べられる自分が新しい子供と幸せそうにしている母親に顔を見せるのはどうかと悩み去っていくとやさしさ。
母に会いに行くという小さな願い、鳴りたかった自分に夢、母への気遣い、そして母の愛と様々な気持ちが約20ページほどの中に描かれている。「ぼくはうしだから もうじきたべられるのだそうだ」というなくなってしまう運命はどうしようもなく、そんな中で夢や願いはかなえることができなくても牛が願うのは自分を食べる人が自分のいのちを大切にしてくれたらいいなという願い。
『もうじきたべられるぼく』 というタイトルから感じるように、命をいただくということに関して考えさせられる内容で、生物の命をいただくのだから生きるべきといった説教でもなく命は大切にしなければいけないという圧でもなく、ただ小さな願いとして自分のいのちを大切にしてほしいという気持ちだ伝わってくる。
小さな子供がよめば母親に会わない牛になんでと聞くかもしれない、食べられるという意味が分かる子供が読めば悲しいと思うかもしれない。大人が読めばかなえられない夢や願い、母親の愛、ノスタルジーなどの感想をいだくように少ないページ数と文字の中に様々なフックが仕込まれた絵本だった。