『ハクメイとミコチ』の1巻から4巻を読み直して、感じたことや思ったことを覚書としてまとめました。
背景と小物が細かく描かれているので、文化的な面からこの作品を読むと非常に楽しいです。

1巻を読むだけで3〜4時間は過ぎてしまう。
そんな濃密な世界の記録です。

ハクメイとミコチ 1-4巻 表紙

ハクメイとミコチ 第1巻

ハクメイとミコチ 1巻 表紙
ハクメイとミコチ 1巻 表紙

第1話『きのうの茜』

足下の歩き方 その1『夕焼けトンビの目撃者』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ

夕焼けトンビを探しに行く話ですが、さすが1話目。色々なことが詰め込まれています。
見開きでの夕焼けトンビのカッコよさ、朝日を浴びて変化する色というファンタジー。
それ以上に、前半描かれている彼女たちの生活の空気感が素晴らしい。ハクメイとミコチの人間関係がまだ浅く、少し他人行儀なところが見どころです。

第2話『ふたりの歌姫』

足下の歩き方 その2『夢品(むじな)商店の露店について』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、コンジュ

マキナタでの祭りで歌姫に選ばれるコンジュとミコチの話。
「付喪神(つくもがみ)」が登場しますが、実はこの話以降、こういったファンタジー色の強い話は格段に減ります。
1ページ目から描かれている、山間にあるマキナタがどんな街なのかを見るのが楽しい。
奥に見える時計台のような建物は何なのか。大きなアーチ状の建物は昔は門だったのか。想像が膨らみます。

第3話『ガラスの灯』

足下の歩き方 その3『魚の幽霊の噂』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、セン

生命を研究しているセンが登場。
センの研究で動く「骨の魚」が飛び跳ねる躍動感と水飛沫が素晴らしい。よく見ると、背びれも何もかもすべて骨が繋がって描かれており、とにかくカッコいい。
一番気になるのは、コラム「その3」での「骨まっしぐら」という骨の魚が食べている餌。骨なのに食べるのか? 餌が必要なのか?

第4話『星空とポンカン』

足下の歩き方 その4『ゴライアスオオツノハナムグリ』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、セン

正確には家が爆発して一夜を野宿で過ごす話。
この世界に火薬があり、それを貰って何かしているハクメイと、野宿での料理に情熱を燃やすミコチ。
P88の見開きで、夜の中の風をどう表現しているか。ぜひ見てほしい描写です。

第5話『仕事の日』

足下の歩き方 その5『親方との出会い』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、イワシ(イタチ)

ハクメイとイタチのイワシ親方とで風車を修理する話。
ハクメイの仕事と、動物型の人との絡みが初めて描かれます。
風車での出来事で落ち込むハクメイが良い。普段の天才性と楽観的な性格を感じる落ち込み方をしています。
草鞋を受け取ってからタオルを掛けられるまで、あえてハクメイの目を描かない演出が素晴らしい。

第6話『舟歌の市場』

足下の歩き方 その6『街の興(おこ)り』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、喫茶店のマスター(マヤ)

積み木市場(アラビ)で財布を落とすお話。
かつての九龍城のように建物をひたすら上へ上へと建て増ししている建造物。数えると10階ぐらいあります。
ミコチが寄る喫茶店には、サイフォンにダッチコーヒー、熱燗用のチロリまであるとは。
P149の左、カモメが飛んでいる小さなコマ。このコマひとつで場面転換が行われていて、最もわかりやすい転換な気がします。
P152の見開きで描かれる街の静寂が、遠くから聞こえる歌声をさらに引き立てています。

第7話『仕事の日2』

足下の歩き方 その7『コンジュその後』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、コンジュ

ミコチの仕事場にコンジュが初めて訪ねてくる話。
ハクメイとミコチの本業がわかるのと、家が実はかなり広いことが判明します。
(この話で初めてハクメイが女の子だと知りました)

第8話『囲炉裏と博打』

足下の歩き方 その8『タコ服』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、ミマリ、シナト

雪で遭難しかけて呑み屋に避難する話。
博打をするのですが、何気に小ずるい二人に親近感を感じます。今の時代の人にサイコロ博打は通じるのでしょうか?
ハクメイとミコチはどこででも酒を飲んでいる気がします。


ハクメイとミコチ 第2巻

ハクメイとミコチ 2巻 表紙
ハクメイとミコチ 2巻 表紙

第9話『ミミズクと昔話』

足下の歩き方 その9『キャラバン隊[緑尾老(りよくびろう)]』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、オロシ(フクロウ)

1巻の表紙のように、食材探しの最中にフクロウのオロシに会う話。
収穫しているのがローズマリー、セイボリー、バジリコ。ハーブではあるけど野草として生命力の強いものばかりなので、土地のイメージはイタリアあたりと日本のミックスなのかなと。
P15、捕食者に遭った恐怖と「気のせいであってほしい」という気持ちで、ハクメイの目からハイライトが消える瞬間が良い。
本当にゆっくりと顔を上げて上を見たんだろうな、とイメージできます。

第10話『凝り性の染め物』

足下の歩き方 その10『ミコチ・プレゼン』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、セン

ミコチがセンの服を作るお話。
工業化以前は布が貴重で家庭で服を縫っていたことを考えると当たり前なのですが、染め直しまでしているので完全にミコチの道楽ですね。
気になるのがこの服を1日で完成させていること。骨モチーフのデザインは1日では無理でしょう。
ストーリーよりも絵としての面白さが優先された話かなと。

第11話『組合の現場』

足下の歩き方 その11『ふたりの男』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、イワシ、ナライ、カテン

ハクメイが初めて大工組合・石貫會に行って石垣修理の手伝いをお願いする話。
手伝いを断られてイワシの道具の泥洗いを申し出るところは、読んでいて「ナイチンゲールかよ」とツッコミを入れたくなりました。
ひたすら刃物を研ぐシーンで、刃先が研ぐ前と後で描き方を変えていることに、作者の手間を感じます。

第12話『大岩と飼(か)い石』

足下の歩き方 その12『石貫會(いわぬきかい)で一番怖い人』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、イワシ、ナライ、カテン、ハクヨ

11話の続き。完全にキャラクターの面白さと、細かい描写の面白さで見せる回です。
P111でハクメイが靴を履いているのが分かったり、作業帽を取ると汗で髪が下がっていたり、細かいところが楽しい。
P122、ナライが岩を割り、そこでハクメイの目のアップ。自分の案の成功と、割れた瞬間に目と頬に湧き上がる感情を描き、ズンッと割れた岩が倒れる音がする。最高に盛り上がります。

第13話『卵の美容師』

足下の歩き方 その13『リモンチェッロの美味しい店』

【登場人物】ハクメイ、ジャダ、ミコチ、コンジュ

卵の殻の美容院でハクメイが髪の毛を切ってもらう話。
家やハクメイの髪型とか、簡単にデザインを変えてくるのがすごいです。
ジャダが初登場ですが、P142の3コマ目で、彼女も違う国からの旅人だったことがうかがえる帽子が描かれています。

第14話『喫茶店とブドウパン』

足下の歩き方 その14『カフェ グリマー』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、宿なしネズミ×2匹

森の中の喫茶店にピクニックをする話。
雨の中を疾走するネズミのシーンを描きたかったのかなと思わせる躍動感。
正面から描けば楽なのに、様々な方向から描いていて本当に大変そうです。

特別編『桑酒の樽』

ミコチが桑を踏みつけているのは、伝統的なワインの製法ですね。
カラーがページごとに色の塗りが違うという、何とも色を付けた人の苦労が透けて見えるページです。


ハクメイとミコチ 第3巻

ハクメイとミコチ 3巻 表紙
ハクメイとミコチ 3巻 表紙

違う世界の話なのに、日常の美しさが我々の想像を超えて描かれています。
汚れを描かず、新海誠やラッセンのように彼女たちの日常を見せてくれます。

第15話『長い一日』

足下の歩き方 その15(前)・(後)

  • (一)蜂蜜館の人々
  • (二)ジュレップと地下通路
  • (三)陰の酒蔵
  • (四)紙飛行機と煙玉
  • (五)月明かりと追憶

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、コンジュ、旋毛丸、ヒガキ

享楽家ウカイが作った「蜂蜜館」での騒動。
ヒガキが館での騒動を仲裁するとき、ウカイが持ってきた「蜂蜜館ジュレップ」をミコチに作ってほしいと願い出る。
酒造りで財を成したのに、そのオチなのね、と思いました。
旋毛丸(つむじまる)というキャラの使い方がうまく、嫌な奴からいい奴までもっていっているのが良い味を出しています。

第16話『樹上の梯子』

足下の歩き方 その16 『ある日の日記』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、コハル(コクワガタ)

ミコチの家の上のほうが騒がしいので調べに行くと、気づけば同じ楠に他の人たちが住んだり、お店を出したりと賑やかになっている話。
ミコチの故郷の話が少し出ます。どうやら木の上に家を建てて生活するスタイルらしい。
それとハクメイがミコチの家に転がり込んだことが明らかに。

第17話『休みの日』

足下の歩き方 その17『古着屋[リ・ルナ]』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、イワシ

ハクメイたちとイワシが、休日にマキナタをぶらぶらと服を買ったり昼ごはんを食べる話。
マキナタの街が思った以上に「小さい人達の街」で、少し大きなイワシだと入れない店が多い。
マキナタのある国の文化を感じさせます。

第18話『カヌレの香り』

足下の歩き方 その18『姉弟の才能』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、スズミ、ケイト、シグレ

夢品商店の店主スズミが弟のケイトにカヌレを作ってもらうよう、ミコチに交渉をお願いする話。
ミツバチのシグレのセリフが男前でカッコいい。まあ、メスなんですけどね(蜂蜜を集めるから)。

第19話『笑顔の写真』

足下の歩き方 その19『写真家ミミへのインタビュー』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、ミミ

写真家ミミがハクメイ達を撮影するお話。
P173、いくつもの写真がボードに貼られていますが、その写真の一枚一枚の絵に作者のセンスが出ています。


ハクメイとミコチ 第4巻

ハクメイとミコチ 4巻 表紙
ハクメイとミコチ 4巻 表紙

第20話『水底のリズム』

足下の歩き方 『木こりの歌』

  • (一) 静寂と喧騒
  • (二) 潜水服とタンバリン

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、セン、コンジュ、ナライ、カテン

センの研究で、水の中に潜ることができる潜水艇(骨の魚)のテストを行う話。
最初のページではコンジュがタンバリンを叩き、センが指示を出しているだけで何が起きているかは明確にわかりません。
しかし次のページで、大きな骨の魚に彼女たちの状況が一目でわかる見開きになっているのがニクい。
見た瞬間に引き込まれる見事な見開きです。

第21話『ネジとベッド』

足下の歩き方 『鰯谷とジャダ』

【登場人物】ジャダ、イタチ、ナライ、カテン

イタチがジャダの壊れた家(美容院)を修繕する話。
この作品で最も頻繁に出てくる男性キャラであるイタチ。
この話をハクメイですることも十分にできたでしょうが、ここでイタチを出してくるあたりがこの作品らしさです。
ページ数がもっとあったならハクメイでやっていたんじゃないかな、と。見栄えになる一枚絵がなく、コマもとても細かく割っているのが分かります。

第22話『ジャムと祭り』

足下の歩き方 『八百屋のミキ』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、マヤ、スズミ、ミキ、旋毛丸ほか

お祭りの空いた屋台でミコチがジャムとパンを売る話。
前日に急に言われて仕入れから仕込み、そして祭りへ。週刊漫画なら何話にも区切れそうな話を濃密に描いています。
ミコチの秀才感というか、能力のギリギリを攻める感じがあって良い。
あと偶然でも幸運でもない「大人の交渉」をしているのが、生活が見えて世界観を強固にしています。
P67のミコチの怒りマークは、これが初めてじゃないかな。
P87、ハクメイとミコチが忙しく働いているコマが続きますが、ここで音がないのは楽しいことをやっているときのスピード感。
ノートをめくるように情景が流れているように描かれています。数時間を一瞬に感じるという表現かもしれません。

第23話『一服の珈琲』

足下の歩き方 『母からの手紙』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、マスター

動かなくなったコーヒーミルの話。
久しぶりのファンタジー。1巻の2話以降はこういった話もありませんでした。
絵よりも物語の強い話です。

第24話『竹の湯』

足下の歩き方 『コヌタ焼きについて』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ

温泉に行ったら入れなかったから自作するという話。
竹の話だったり、墨壷だったりと説明が多いのですが、都合のいいことが起きているのではなく、それなりの理由があることを言葉にして分かりやすく説明してるのは珍しい気がします。
お湯を作るのに温めた石を入れる方法、初期の家の風呂のお湯を作るのも同じ方法を取っていたと思ったのですが、ミコチが驚いていたから違うのかな。

第25話『大根とパイプ』

足下の歩き方 『劇団トンプ公演[寝そべる紫煙]』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、アユネ

ミコチの姉のアユネが訪ねてくる話。
吹き大根を食べたり、ウィスキーを飲んだりしていますが、アユネがミコチとの距離感をどうとるか、色々と試している感じがします。
P143の最後のコマ、アユネの笑みはごまかしかな?
劇団トンプの公演内容を読むと、アユネが訪ねてきたことの理由なのかな、と。

第26話『夜越しの汽車』

足下の歩き方 『同期の先輩』

【登場人物】ハクメイ、ミコチ、みーちゃん(鉄道員)

2人が汽車で旅をする話。
今まで26話までの話の中でもっとも人々の空気感、背景のような人達の躍動を感じます。
特にハクメイが食堂車へコーヒーを買いに行くまでの無言の時間は、僕も同じ空間で同じ空気を感じている気になります。