東京でデザイナーの夢破れ、都会に疲れ地元に戻ってきたりん子と東京の本社から上司に左遷させられた雲春の視点を中心とした静岡県でのローカルネタだけで10巻以上も連載が続いている地方ネタを題材にしたコメディー4コマ漫画。

【 あらすじ 】

東京でデザイナーとして働いていた有野りん子は、仕事の行き詰まりと満員電車で骨と心を折ったことからデザイナーをあきらめて地元の静岡にUターンして地元で再就職する。東京本社から左遷された雲春やブラック企業で心を病み先に地元に帰っていた同級生のハッチ、地元からでずに働いている会社の同僚たちとともに働きながら交流を重ねていく。

基本的に静岡県のご当地ネタを中心として徳川家康、富士山、お茶といった日本全国誰もが知っているネタから静岡県に住んでいても知らないようなローカルネタを1つの話として面白く4コマとして描かれているのであまりネタを安売りのように消化せずに1つのネタを1の連載で広げて描く作者の描き方の上手さを感じる作品でもある。

 

【感想】

1巻ではりん子が東京から戻ってきたばかりで、再就職先での仕事と会社のあり方が東京と地方での働き方の違い、生活環境のギャップ、刷り込まれた地元の静岡愛が面白おかしく描かれている。

文化比較としての面白さのあつかっており、巻が重ねるにつれて静岡の地元ネタが増えていき、静岡県が横に長く,
大きな川によって文化が分かれていることによって静岡県内でも地域の個性の差をネタとして楽しむこという扱いが増えていく。これに関しては巻数を重ねて静岡県にある営業所の支部間での交流として、支部ごとの人物が増えることで地域の個性を登場人物にあわせて出しやすくなったことで幅が広がっている。

ほかの地方をネタにした漫画との違いとして、その地方以外を知っているキャラクターが多いところがあげられる。主人公のりん子、左遷された雲春と地元愛(富士山)に目覚めた水馬、雲春の同僚で東京本社で働く名々伏と何らかの形で東京という都会を知っており、人物ごとに東京と静岡に対しての比重が違うように設定されている。

・静岡から東京にでてまた戻ってくる(りん子)
・東京で育ち、左遷され静岡(雲春)
・静岡から東京にでて地元に帰ってきて地元愛(富士山)にめざめる(水馬)
・東京で今も生活している(名々伏)

ブラック企業で心を病んで地元に戻ったハッチの東京の記憶のほとんどがブラック企業なので話の展開には使われることがあるが、比較としてはあまり出番がない。

人物ごとの差異によって4コマとしてのツッコミやオチに使われ4コマ目のパターンを増やすことで話の方向性にバリエーションが作られている。東京と静岡に対してのパラメータとキャラクターの性格によって今読んでいる4コマと次の4コマの連続した関係性がつくったり、1つのネタの終わりを担当したりとうまく使われている。

どの巻でも登場人物が多いわりに、まんべんなく登場するのもこの作品の強みにではないだろうか。りん子が務める会社は東京に本社が静岡県に3つの営業所があり、愛知よりにある浜松の西部、中部の静岡支社、東京よりの伊豆の東部営業所の3つだ。江戸時代では3つの国だったこともあるためか、それとも静岡県の横長と川や山で分断された文化の差生まれているためかわからないが、このおかげでキャラ付けされ数多くの登場人物たちにわかりやすい設定として、富士山が好き、祭りのために1年働いているといった個性的なキャラクターが生み出されている。

りん子たちがいる静岡支社が話の中心になるのは当たり前として、他の営業所の人物も地域での差異を当てはめることでキャラクター性を作っているためにりん子や雲春たちが出てこない話でも同じように地域の比較によるギャグが成り立ち、静岡県としてのご当地ネタだけではなく、静岡県の1つの地域としてのご当地の話として細分化されネタとして扱われるのでいまだにネタに困ることなく10巻という巻数が続いているのではないだろうか。

2014年からまんがタイムでの連載をされてそろそろ10年という長い期間、ローカル女子の遠吠えをほぼ静岡県1本で戦い続けている瀬戸口みづき先生には感謝です。