結論から言います。
漫画『はつみ道楽』は、毎月1万7830円という「絶妙な金額」で、大人の停滞をそっとほどいてくれる漫画です。
大金ではありません。
けれど、何かを始めるには十分。
つまりこの作品は、「現実に起こりうるお金」で人生が少し動く、その感覚が心地いいんです。
もし、あなたの口座に毎月「1万7830円」が、給料とは別に振り込まれるとしたら。
何に使うでしょうか。

本作の読みどころ
- 毎月1万7830円という「絶妙な金額設定」が生むリアリティ
- 香水、乗馬、オペラなど「気になっていた体験」を解禁する爽快感
- 趣味にならなくてもいい。「興味を満たす」だけで道楽になるという提案
はつみ道楽
- 著者:サメマチオ
- 出版社:宙(おおぞら)出版
- 巻数:全1巻
「賢く生きてきた」女性の変身
主人公の初美は、会社との共同特許の報奨として、毎月1万7830円を受け取ることになります。
豪遊するには少ない。
けれど、何かを買ったり体験したりするには、ちょうどいい金額です。
これまで「賢く、賢く」生きてきた彼女ですが、
この臨時収入をきっかけに、「もっと愉快な感じでいいかもしれない」と考えるようになります。
香水、乗馬、オペラ、高級天ぷら。
生きていくために必要ではないけれど、ずっと心のどこかで気になっていた「道楽」を、少しずつ解禁していきます。
物語の大半は、こうした“道楽の体験回”として描かれます。
読後に残るのは、「やってみたかった」を肯定してもいい、という感覚です。
趣味にならなくてもいい。「興味を満たす」という道楽
一般的に「道楽」といえば、仕事以外に熱中できる趣味を指します。
ただ、本作で描かれる初美の道楽は、少し趣が違います。
彼女は体験したことを、継続して趣味に育てるわけではありません。
「1万7830円で、自分の好奇心を満たすこと」
それ自体を、道楽として楽しんでいるのです。
新しいことを始めるには、体力も気力も要ります。
その最初の一歩には、何かしらの後押しが必要になることも多いですよね。
初美にとっての1万7830円は、曖昧で気まぐれな好奇心を肯定してくれる“許可証”のような存在です。
結局のところ、お金そのものより「やっていい理由」をくれる点が、この仕組みの強さだと感じます。
共感ポイント:私もだいたいやっている(でも、できないものもある)
この「好奇心を満たす道楽」には、かなり共感しました。
初美が体験する道楽の中で、香水とオペラ以外は、私も同じように経験があります。
一方で、香水とオペラは未体験です。
鼻炎だったり、田舎暮らしだったりと、環境的なハードルがあるんですよね。
だからこそ、この漫画の優しさがよく分かります。
「できる範囲でいい」と背中を押してくれるからです。
ルーチンワークからの脱出
人生を80年と考えると、そろそろ折り返し地点。
気づけば日々の暮らしはルーチンになり、映画も新作より「安心できるいつもの作品」を選びがちになります。
年を重ねるとは、たぶんそういうことなのかもしれません。
だからこそこの漫画は刺さります。
「大人になると、まとまった時間が作れない」と感じている人にとって、初美の姿は現実的な刺激になるはずです。
新しい体験が自分を変える
最近、友人が突然、電子ピアノを買いました。
理由はとてもシンプルで、「やりたいと思ったから」だそうです。
一方で私は、20代前半に「サックスをやりたい」と思ったまま、15年以上が経っています。
やろう、やろうと思っているうちに、時間だけが過ぎてしまいました。
新しいことは、気合だけではなかなか始まりません。
きっかけが必要です。
『はつみ道楽』は、そのきっかけを疑似体験として与えてくれる漫画だと思います。
毎月1万7830円。
もしこのお金が手に入ったら、あなたは何をしたいでしょうか。
この漫画を読みながら、自分だけの「道楽」を妄想してみる。
それもまた、一つの立派な道楽です。
正直、こういうのは夜に読むのがいちばん効きます。
「やってみたい」を肯定してくれる話なので、
気になった今がいちばん買いどきです。
しかも全1巻。サクッと読んで、明日を軽くできます。



