これは、フィクションではありません。
生活保護を受給して「さあ、ここから人生をやり直すぞ」と決意した矢先に亡くなられた、ある漫画家の最期の記録。
全32ページ。そのうち漫画部分はわずか23ページ。
そこで物語は唐突に途切れ、残りのページには「これからの構想」が書かれたアイデアノートが掲載されている。
50代、独身、職なし、病気。
人生の崖っぷちに立たされたホラー漫画家が、自らの転落と再起を描こうとした遺作、『生ポのポエムさん』を紹介。

本作の読みどころ
- ホラー漫画家が描く、リアルすぎる「貧困と病気」の恐怖
- 暗い現実をコメディタッチで描こうとした作者の矜持
- 漫画の続きが存在しないという、ノンフィクションの重み
生ポのポエムさん
- 著者:吠夢(ぽえむ)
- 出版社:大洋図書
- 出版日:2018年6月1日
「落ちていく」ということ
主人公は、50代のホラー漫画家だった「ポエムさん」(作者自身の分身です)。
長年続いた連載が終了し、収入が途絶えたところから物語は始まる。
不規則な生活とストレスがたたり、糖尿病が悪化。
視力は低下し、目が見えにくくなるという漫画家として致命的な状況に追い込まれていく。
それでも不安を紛らわすために増えていく飲酒量。まさに悪循環。
お金もなく、体も壊れ、精神的にも追い詰められていく「転落」のプロセスが、淡々と、しかしリアルに描かれる。
ホラー作家が描く、ギリギリのコメディ
作者の吠夢さんはホラー漫画家。
そのため、画面全体にはどこか暗く、ねっとりとしたホラー特有の空気が漂っている。
しかし、本作のトーンはあくまで「コメディ」。
自身の悲惨な状況を、あえて道化のように振る舞うキャラクター「ポエムさん」として描くことで、読者が引いてしまわないように、怖くなりすぎないように中和され読みやすくなっている。
「生活保護受給者にならないと生きていけない」という極限状態を、エンターテインメントとしての演出をいれたくなるのは漫画家としての意地を感じなのかもしれない。
描かれなかった「再出発」
編集者から「生活保護」の受給を勧められ、ポエムさんは福祉事務所へ足を運び。
手続きを経て、なんとか生活の基盤を確保し、「よし、これでまた漫画が描ける」と再出発を誓ったところで、23ページの漫画は終わる。
ハッピーエンドではありません。
この直後、作者は亡くなられたから。
巻末に収録された9ページの「アイデアノート」には、生活保護受給後の生活をどう漫画にするか、どんなネタを描くかが書き記されている。
続きを描く気満々だった。
しかし、その続きが描かれることは永遠にありません。
Kindle Unlimitedなどで読むことができる本作。
一人の漫画家が命を燃やして残した最後の23ページを、あなたはどう読みますか。
